第2話 ページ2
もういっそ引き出してしまおう、と決断しサンダルを脱いでいると、後ろからぱたぱたと足音が聞こえた。さっきまで寝ていたはずの弟……クリスが、サンダルがあるにも関わらず裸足で駆け寄ってくる。慌てぶりが見て分かった。
「どうしたのお姉ちゃん、さっきの音は！？」
『クリス！起きちゃったの？』
「そりゃ起きるよ！ねえ、そこに何かいるの？」
アリスは答えない。何かいる、については勿論YESなのだが、もし自分達にとって危険な何かだったら。
説明のしようがないし、何より弟のクリスに近付けたくなかった。ただ青い物体はなかなか上がってこず、まだ水中でもがいている。
『きっと猫か何かよ。それよりクリス、危ないから下がって……』
「ボク、見てくる！」
『えっ、ちょっと！？』
アリスの静止を聞かず、クリスはパジャマも脱がずに軽く助走をつけてプールに飛び込んだ。ドボンという音と共に水飛沫が再び舞う。沈んでいく弟を見送ったアリスは数秒慌てふためいた後、上がってきた時のためにタオルを用意しようと家の中へ走り出した。
＊
散々だ。
自分の頭上で猫呼ばわりされてることは露ほども知らないソニックは、水中で一生懸命にもがきながらそう思った。
エッグマンとの戦いで発生した時空の歪みで知らない世界に飛ばされ、足の遅い人間や機械に追いかけ回され(1人だけ例外が居たが)、挙句の果てに嫌いな水、しかもかなり深めなプールに落ちてしまった。
陸上では超音速で駆け抜ける彼だが、水中では一転し筋金入りのカナヅチと化す。どんなにジタバタと手足を動かしても水から上がれず沈む、を何度も繰り返している。
「(知らない世界で水に溺れるなんてな、)」
ツイてないぜ。とどこか冷静に心の中で呟く前に、頭上で何かが飛び込んでくる音を耳が捉えた。
ソニックは音の方を見上げる。しかし顔は逆光でよく見えない。頭身の高さから人間であることは確かだった。こんな所まで捕まえに来るのか、と睨むようにして見上げるが、今回ばかりは少し違ったようだ。小さな体躯の少年が、一生懸命に手を伸ばしてこちらへ向かってきている。
その様子をぼーっと眺めていると、いつの間にか手を掴まれ、上へと引っ張りあげられた。あっという間に腕の中に収められたソニックは、そこで初めて自分が助けた人間の顔、その優しげな瞳を、水から上がる直前、その一瞬だけ捉えた。
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A - すごく素敵な作品でとても続きが気になります！続編もお願いしますっ！ (2022年4月24日 22時) (
レス) id: 1c577920f9 (このIDを非表示/違反報告)
憂象 - めちゃくちゃ面白いですね！！！！再度ハマるきっかけになりました！！ありがとうございます！！！(><＠) (2022年3月11日 21時) (レス) @page50 id: 63f42a208b (このIDを非表示/違反報告)
にーご - すごく面白いです！続編も期待しています(●´▽`●) (2021年2月7日 21時) (レス) id: 1e32eaca6c (このIDを非表示/違反報告)
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