私の幸せ１５ ページ47
数日後。
ももちゃんを保育園に送り届けてから、
10年以上ぶりに訪れた安永の家は、出て行ったころとあまり変わっていないように見えた。
インターホンを鳴らすと、返事よりも先に玄関のドアが開き叔父さんが出てきた。
「いらっしゃい」
「…お邪魔します」
久しぶりに入る家の中。
私がいた頃よりも物が減ってスッキリとしてる。
叔母さんの存在を象徴するかのようにリビングの机の上にいつも置いてあった灰皿もなくなっていた。
灰皿だけじゃない。
叔母さんの存在を匂わせる物がひとつもないことに
離婚という言葉が立体的になって伝わってくる。
「…叔母さん、本当にいないんですね…」
「…あぁ」
「……どうして？叔母さんと叔父さん…仲良かったのに…」
「…それは…これから話すよ。
さあ、掛けて」
促されてソファに座ると、叔父さんは床に座った。
「これを、Aちゃんに渡したくてね…」
叔父さんは床に座ったままテーブルに白い封筒を置いた。
「これは…？」
表には何も書かれていないけれど、開封したように見える封筒。
一体なんなんだろう。
「お母さんからのAちゃんへの手紙だよ」
「！？お母さん…？」
記憶の中に微かにしか存在していない言葉を突然言われて、心拍数が一気に上がる。
お母さん…私の…？
震える手で封筒を手に取り裏返すと
「北川真由季」
と書いてある。
まゆき…
ママの名前…
ずっと知りたかったけど、叔母さんは教えてくれなかった。
『あんた捨てられたのよ？自分を捨てた人間の名前なんて知ってどーすんの？』
煙草の煙を私に吹きかけながら、嘲笑していた叔母さんを思い出し、喉元が苦しくなる。
「…読みたく…ないです…
だって…お母さんは私を捨てた…
捨てた理由が書いてあったら…傷付くだけですから…」
封筒を机に戻そうとすると、叔父さんが封筒ごと私の手を握った。
「違うんだよ…！」
「捨てたわけじゃないんだ…！！」
違う…捨てたわけじゃない…？
「どういう…ことですか？」
「手紙を読んでくれたら、きっと、Aちゃんが知りたかったことが分かるはずだ」
私が…知りたかったこと…。
幼い頃は疑問が尽きなかった。けれど今は…
特にないと言ったら嘘になる。
苛烈な日々の中で
いつのまにか諦めてしまっていた。
真実なんて存在しない。今を生きるしかない、と。
でも、答えがこの中にある…。
手の中の封筒を伸ばすと、便箋を取り出した。
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愛 - 続きはまだでしょうか？急かしてるわけではなく、純粋にこのお話が好きすぎて続きが気になるんです！更新待ってます。 (2019年7月26日 23時) (
レス) id: 88c3d5de1a (このIDを非表示/違反報告)
すこ - 引き込まれました。キャラクターたちの心情を、一人ひとり大事に大事に書かれてるように思います。切なくて、でもお互いを大切に思っていて、すごく素敵な作品だと思います。次の更新を楽しみにして待ってます。 (2019年7月4日 1時) (レス) id: ca0d230652 (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - 更新ありがとうございます。廉くんとは…ならないんですかねぇ…これからも楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2019年7月3日 7時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
シー(プロフ) - 1から6まで一気に読んだくらい本当に面白いです！更新頑張ってください！！ (2019年7月1日 7時) (レス) id: dfd347ea96 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - こんなに引き込まれた小説は久しぶりで、一気に読みました。続きを楽しみにしています。 (2019年6月11日 14時) (レス) id: e8aeac1cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2018年10月22日 8時
