＊２人だけの記憶２＊ ページ40
そっと、廉くんの胸を押し戻すと、
廉くんの顔を両手で挟んで、唇に口付けた。
『…Aさん…？』
唇が離れた瞬間に漏れ出た困惑の声も無視して、何度も角度を変えてキスを繰り返す。
何も考えたくない。
ただ、こうしていたい。
とめどなく押し寄せる感情は、理性の器から滝のように溢れ落ち、衝動を加速させる。
廉くんの首の後ろに腕を回してキスをすると、額と額を合わせ、思いのままを口に出した。
『…廉くん…私を抱いて…』
静寂の中に囁くと、
廉くんの目が見開き、視線が揺れた。
『廉くんのこと…
全部…覚えていたい…』
声が震え、涙が落ちた。
矛盾も羞恥心も罪悪感もすべて胸の内に閉じ込めて鍵をかけた。
何も持たない私を、愛してくれた人の肌の感触を、この体に刻み込んでおきたい。
廉くんが欲しい。
義務感からじゃない。
女としての本能が、廉くんを求めていた。
合わせていた額を離し、
その額、涙で濡れた目蓋、高い鼻先へ口付けをするたびに体が熱くなっていく。
そして、再び唇に口付けた瞬間、私を見返す視線がまっすぐなものに代わり、廉くんの腕が背中に回ると、
その先に、言葉はひとつもいらなくなった。
＊
冷気に包まれた部屋の中で、私達だけが熱を発する。
数えきれないほどのキスを交わし、
ひとつひとつ確かめ合うように、剥き出しの肌を重ね求め合った。
わかってる。
こんな風に体を重ねても、私の心が戻る場所はたったひとつしかないこと。
それでも、廉くんに抱かれたかった。廉くんを感じたかった。
今夜だけは
この感情に飲み込まれていたかった。
忘れない。
あの日、インターホンに映ってた汗だくになって肩で息をしてた廉くんも、
おなか越しにももちゃんに手を蹴られてびっくりしてた廉くんも、
ももちゃんが生まれたとき、すぐに駆けつけてくれて涙を隠してた廉くんも、
ももちゃんが救急車で運ばれたとき一晩中付き添ってくれた廉くんも、
今、感じ合うぬくもりの感触も、分け合う熱も、混じり合う汗も、
私の中に残る廉くんの何もかもを、
一生忘れない。
紫耀くんを愛しながらも、
廉くんと過ごした日々の記憶は色褪せることも朽ちることもなく永遠に輝いたまま、この心に留まり続ける。
矛盾した、自分勝手な、
人生最大の我儘を、どうか許して。
ごめんなさい。
ありがとう。
さようなら、廉くん。
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愛 - 続きはまだでしょうか？急かしてるわけではなく、純粋にこのお話が好きすぎて続きが気になるんです！更新待ってます。 (2019年7月26日 23時) (
レス) id: 88c3d5de1a (このIDを非表示/違反報告)
すこ - 引き込まれました。キャラクターたちの心情を、一人ひとり大事に大事に書かれてるように思います。切なくて、でもお互いを大切に思っていて、すごく素敵な作品だと思います。次の更新を楽しみにして待ってます。 (2019年7月4日 1時) (レス) id: ca0d230652 (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - 更新ありがとうございます。廉くんとは…ならないんですかねぇ…これからも楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2019年7月3日 7時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
シー(プロフ) - 1から6まで一気に読んだくらい本当に面白いです！更新頑張ってください！！ (2019年7月1日 7時) (レス) id: dfd347ea96 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - こんなに引き込まれた小説は久しぶりで、一気に読みました。続きを楽しみにしています。 (2019年6月11日 14時) (レス) id: e8aeac1cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2018年10月22日 8時
