＊２人だけの記憶＊ ページ39
あの夜に続きがあったことは、2人しか知らない。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
『………ええんよ、Aさん…
……教えて？』
私を映し出す薄茶色の瞳を見つめ返すと、頭に浮かんだ言葉をそのまま声に出した。
『…彼を…想っていたい…。
二度と会えなくてもいいから、、
この想いを捨てずに生きていきたい…』
言いながら、彼の笑顔が浮かぶ。
目が無くなるほどの満面の笑顔、
優しさに満ちた柔らかい微笑み、
幼さが残るイタズラっぽい笑顔、
そのどれもが、いつだって、孤独な暗闇の中にいた私を陽だまりの世界へ連れて行ってくれた。
記憶の中にある笑顔を思い出すだけで、幸せに生きていける。
私は今も、、紫耀くんを愛してる。
『…そうやと…思ってた。最初から、分かってたよ。
Aさんごめんな。
ほんまの気持ちを言いだせへんくなるほど、俺はAさんのそばにおりすぎた』
廉くんは私を引き寄せ胸に抱きしめた。
全身が温もりに包まれ、耳の中に響く鼓動を感じると涙が溢れた。
『その想いを持ったまま、俺と一緒におるのは、辛いことやな』
無理やり封印したまま、捨て去ろうとしていたこの想いは、決して言わずにおくつもりだった。
なのに、言ってしまった。
言ってしまったからにはもう、廉くんと…生きていくことはできない。
『それでも俺は、あの日Aさんに会いに行ったこと、後悔してない。
会わずにおったら、もっと後悔してた』
肩を掴む指先に力が入り、廉くんの体に更に押し付けられる。
されるがまま、廉くんの服を握り締めると、もう片方の手が後頭部から私の髪を梳いた。
滑るような手つきで髪に触れられるたびに、廉くんとの日々が蘇っていく。
ももちゃんと廉くんの３人で過ごした温かい毎日。
『ももが産まれてからもAさんのそばにいたいと思ったのは、同情なんかやなかったよ。
ほんまに可愛かったから…俺の方がそばにいたいって思ってしまったんよ…』
頭の中に流れ込んでくる震えた声に、また涙が止まらなくなる。
私の心を支えてきたのは、紫耀くんの笑顔だけじゃなかった。
廉くんが知っててくれたから、そばにいてくれたから、愛してくれたから、
私は私でいられたの。
当たり前のようにそばにあったその存在の尊さを失いかけて初めて気付く。
過ぎていく日々の中で次第に濃くなっていた感情の答えが、今はっきりと出た。
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愛 - 続きはまだでしょうか？急かしてるわけではなく、純粋にこのお話が好きすぎて続きが気になるんです！更新待ってます。 (2019年7月26日 23時) (
レス) id: 88c3d5de1a (このIDを非表示/違反報告)
すこ - 引き込まれました。キャラクターたちの心情を、一人ひとり大事に大事に書かれてるように思います。切なくて、でもお互いを大切に思っていて、すごく素敵な作品だと思います。次の更新を楽しみにして待ってます。 (2019年7月4日 1時) (レス) id: ca0d230652 (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - 更新ありがとうございます。廉くんとは…ならないんですかねぇ…これからも楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2019年7月3日 7時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
シー(プロフ) - 1から6まで一気に読んだくらい本当に面白いです！更新頑張ってください！！ (2019年7月1日 7時) (レス) id: dfd347ea96 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - こんなに引き込まれた小説は久しぶりで、一気に読みました。続きを楽しみにしています。 (2019年6月11日 14時) (レス) id: e8aeac1cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピナパル
| 作成日時：2018年10月22日 8時
