はじまりの記憶4ーRen ページ11
「廉、やり直したい。私、廉と別れてから誰とも付き合ってへんの」
香澄は俺の胸に額を当てたまま。
少しでも俺の心が引き戻せるように願っているようだった。
でも…
香澄の肩に手を置くとそっと体を離す。
「ごめん」
俺を見つめる濡れた瞳が、拒絶の意思を伝える。
前やったら、情に流されてOKしてたかも知らん。けど今は…
「俺さ、東京に好きな人がおるんよ」
言いながら、簡単に頭に浮かぶあの人の笑顔。
「好きな人…おるんや…。廉、好きになれる人がいたんやね」
「そうやな。高校の時の俺やったら考えられんけど、、もう1年半も片思いしてる」
「1年半も!?」
香澄は大きな目を見開いた。
「長いやろ?」
「…信じられへん」
「な?自分でも信じられん。アホみたいに長く片思いしてんなーって呆れるわ」
「…告白…せーへんの?」
「勇気が持てへん。普通に一緒におるだけでいっぱいいっぱいなんよ。告白なんてしたら倒れるかもしれんわ」
「廉が?」
「情けないやろ?」
自嘲気味に笑いが漏れ出た。
ほんまに、あの人とおると説明がつかん感情に支配される。ひとりでドキドキして、発言これでいいやろかーなんて勘ぐって焦って、あとで凹む。ただの一人相撲。
上京してすぐのころは自分がこんな風になるなんて思いもしてなかった。
「…廉の気持ち、分かる」
香澄は俯きがちに目を伏せた。
「私も、廉に片思いしてる頃同じ気持ちやったから。見てるだけでドキドキして、告白するときは全身が心臓になったかってくらい鼓動がヤバくて、、」
「…そうやったんや…」
香澄は足元に転がる小石を軽く蹴ると何度か頷いて顔を上げた。その目に涙はもうなかった。
「そっかぁ。廉をそんな気持ちにさせる人…きっと素敵な人なんやろうね」
「どうやろ。人それぞれやから」
あの人が素敵な人とはもちろん思うけど、ここで同意するのは違う気がした。
香澄は俺を見て微笑んだ。
「きっとその人は、廉の初恋やわ」
「…初恋?いや、初恋ってもっと早く済ませてるもんやないの?」
「小さい頃にするのとは違うやつ。
初めて、誰かを心の底から好きになるのも初恋やで?」
「心の底から…」
「そうやろ?」
言われてみて考える。
俺、あの人のこと、一緒におるだけで幸せで、ただ好きでいられるだけでいいと思ってる。
これが、心の底から人を好きになるってことなら…
安永さんは、俺の初恋の人。
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愛 - 続きはまだでしょうか?急かしてるわけではなく、純粋にこのお話が好きすぎて続きが気になるんです!更新待ってます。 (2019年7月26日 23時) (レス) id: 88c3d5de1a (このIDを非表示/違反報告)
すこ - 引き込まれました。キャラクターたちの心情を、一人ひとり大事に大事に書かれてるように思います。切なくて、でもお互いを大切に思っていて、すごく素敵な作品だと思います。次の更新を楽しみにして待ってます。 (2019年7月4日 1時) (レス) id: ca0d230652 (このIDを非表示/違反報告)
atu66mi67yu129(プロフ) - 更新ありがとうございます。廉くんとは…ならないんですかねぇ…これからも楽しみに待ってます。頑張ってください。 (2019年7月3日 7時) (レス) id: c65eb063a4 (このIDを非表示/違反報告)
シー(プロフ) - 1から6まで一気に読んだくらい本当に面白いです!更新頑張ってください!! (2019年7月1日 7時) (レス) id: dfd347ea96 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - こんなに引き込まれた小説は久しぶりで、一気に読みました。続きを楽しみにしています。 (2019年6月11日 14時) (レス) id: e8aeac1cf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピナパル | 作成日時:2018年10月22日 8時