責任ーRen ページ42
頭を、トンカチで殴られたかと思った。
安永さんが…妊娠してる……?
腕の力が抜けそうになる。
「誰にも…迷惑かけれないから…引っ越すんだ。
…永瀬くんには…関係ないことだったでしょ?
…大丈夫だから…」
そう言って、腕をすり抜けようとする安永さん。
待って…?誰にも迷惑かけれないって…?彼氏は?ここにおれへん理由てなんなん?
一気に疑問が噴き出て、頭の中が混乱する。
だけど、ひとつだけはっきりしていたこと。
「…大丈夫やないやん…」
俺から逃げようとする身体を、再び抱きしめた。いま、離したら、この人は永遠に一人になってしまう。そんな気がした。
「永瀬くん…」
ぬくもりに触れ、頭の中を少しずつ整理していくと、ひとつの答えにたどり着く。
「ひとりで産むん?」
安永さんが、小さく息を飲むのが分かった。
「彼氏には、言ったの?」
腕の中で小さく首を振る。
「言うつもりない…。ひとりで産むって決めたの」
「…親には?」
「…親はいないの。小さなころに、私を叔母の家に置いてどこかに行っちゃった…。叔母とも疎遠だから、、」
そうやったんや…。
ずっと、ひとりで生きてきたんや。
やから、人に頼るのも苦手で、全部自分の中で解決してきたんや。
時折見せる寂しそうな顔の理由が、やっとわかった気がする。
安永さんの抱えてるものが、こんなに重くて苦しいものとは、想像以上やった。
「私のことだから、私でなんとかするから、大丈夫だよ」
消えてしまいそうな声が、はっきりと耳の中に入ってきた。
「…親も、相手もおらんのに、どうやって育てんの?」
思わず問いかけた。
「…なんとかする」
「なんとかって…そんな簡単なことやないやん…」
「……なんとかするしかないじゃない。
産みたいんだから…会いたいんだから…」
安永さんの声も、体も震えてる。
泣いてる…。どんなことがあっても、愚痴ひとつこぼさなかった人が…。
「……全部…私の全部…捧げた人の子供なの…」
全部…。そうか…安永さんにとって、彼氏は、ずっと一人で生きてきた自分のすべてやったんや。
不意に、さっきの丸山店長の言葉が浮かぶ。
『責任とれんの?』
責任…自分の関わった事柄や行為から生じた結果に対して負う義務…
「もう、いいでしょ?わかったでしょ?お願いだから…帰って…」
知ってしまった俺にできることなんて、たったひとつしか浮かばない。
「帰らへんよ。そばにおる」
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ピナパル(プロフ) - くりんさん» コメントありがとうございます!頑張ります! (2017年6月24日 0時) (レス) id: 13c9717e47 (このIDを非表示/違反報告)
くりん(プロフ) - とても、続きが楽しみです。更新頑張ってください (2017年6月23日 22時) (レス) id: 377230d688 (このIDを非表示/違反報告)
くりん(プロフ) - とても、続きが楽しみです。更新頑張ってください (2017年6月23日 22時) (レス) id: 377230d688 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピナパル | 作成日時:2017年5月22日 10時