ＦｉｒｓｔＬｏｖｅ３*･゜ﾟ･*:.｡..｡.:*･ (ページ37)

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社会人失格ー丸山ページ37

「店長、すみません！！」

早足で店を出ていく永瀬くんを見送ると、バックヤードに戻った。

少しシワがついた、安永さんの個人情報の紙。

バイトの熱意にほだされて、個人情報教えるなんて、俺は店長…いや、社会人失格やな。

安永さんについては、俺も思うところがあった。

まず、住所。

都心駅前のタワーマンションなんて、本屋のバイトが住めるようなところやない。

そして、彼氏。

坂田さんとは、ひきこもりという結論を勝手に出したけど、ほんまのところはちがうんやろな。

それに、安永さん自身。

いつも人を安心させる優しい笑顔でおるけど、時折、一瞬だけ、寂しそうな顔をすることがあった

様子がおかしい、と思ったら突然住所が代わって、先週、退職の申し出。
震えた声で言う姿に、思わず理由を聞いた。

けど、

『すみません。一身上の都合としか言えません…』

そう言われて、それ以上追及することができなかった。

思うところはあっても、いちいち聞かないのが大人。

これまでの経験で、自分自身に影響すること以外は、俯瞰してるのが一番平和やと知ってるから。

ただでさえ、仕事で疲れてんのに、
他人のために、感情を乱されることほど疲れることはない。

永瀬くんに、責任取れんの？と聞いた時、

少しでも戸惑ったら、

「格好つけんなや」

と一喝するつもりやった。

やけど、顔を上げた永瀬くんの瞳は、

一切ブレずに俺を見つめてて、

後先考えられんほど、本気で好きなことが伝わってきた。

俺にも、こんな目してる時期があったな。

簡単なことでも悩んで、他人のために時間割いて、理不尽なことに反抗して…。

いつの間にか、すべてのことに納得できるようになってしまった。

永瀬くんに、安永さんの住所を教えたのは、大人になってしまった自分へのせめてもの抵抗なんかも。

と、店の電話が鳴った。出ると坂田さん。

「あっ！店長ですか？永瀬くんが今からバイト代わって欲しいって電話してきたんですけど、少し遅れそうなんですけど、大丈夫でしょうか？」

「ええよええよー。悪いねぇ」

「全然大丈夫です。ただ、永瀬くんが物凄い息切れしてたんで、それが気になっただけで」

「そうなん？なんか急用かな？
まぁ、とにかく気を付けてきてねー」

知ってても、何も知らんふりできるのが、大人。

慌ててても連絡するなんて偉いやん永瀬くん。

さて、どうなることか…。

若いって、羨ましいわ。