第6話 ページ9
◇
「──で、あるからして……」
二限目の退屈な座学に欠伸を噛み殺す。
教官が淡々と進める講義は誰もが眠くなる程だが、もし居眠りしようものならペナルティが科せられるので皆神経を張り詰めていた。
なんなら一限目、連帯責任でスクワットを二百回もさせられているのだ。
居眠りした奴は当分皆から恨みを買うことだろう。
「警察は現場周辺の目撃情報を集めることになる。
ここで注意したい事……誰かわかる奴いるか?」
座学は基本的に教科書の内容を講義形式で行ったり、周りとディスカッションして行う。
基本的に講義の内容は予習しているので、尚更ただ聞いているだけの講義はつまらなかった。
目撃情報は、犯罪現場に居合わせたストレスや思い込み、警察官の誘導的な質問で目撃者の証言が歪められる可能性がある。
その為、証言を鵜呑みにするのではなく、しっかりとした裏取りが必要である。
──たしか、そう教科書に書いていたはずだ。
はい!と手を挙げた真面目な降谷は、その模範解答をすらすらと述べる。
流石、首席サマだなぁ……と模範的に答える降谷を眺めていると、その横から嫌味ったらしい声が発せられた。
「まあ、
「おい松田?!きさま警察官を何だと思ってる?!」
その声はもちろん、聞きなれた陣平のものであり、当然のように鬼塚教官を激昂させる。
また余計な事を……と頭を抱えると、隣の席に座る諸伏からは同情の眼差しが向けられた。
ごめん、うちの
そんな私を他所に、陣平は生意気に「そりゃーもちろん……」と語りだす。
「誇りと使命感を持って国家と国民に奉仕し
人権を尊重して公正かつ親切に職務を執行し
規律を厳正に保持して相互の連帯を強め
人格を磨き、能力を高めて自己の充実に務め
清廉にして堅実な生活態度を保持する
…………それが警察官でしたよね?」
「わ、わかっていればよろしい!…では今日の講義はここまで!」
完璧に警察官の職務倫理の基本を語ったことに教官は驚いたようで、そのまま講義を終了させた。
各自しっかりと復習しておくように……と言い残すと、足早に教室を去っていった。
あの不真面目そうな陣平から、そんな模範的な解答が飛び出たのだ。驚くのも無理はないだろう。
実際私も彼の意外な行動に少々驚きを覚えていた。
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作者名:りもねん | 作成日時:2022年5月28日 14時