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第23話 ページ26




「──っ!はぁっ…はぁっ………」


あまりの息苦しさに目を覚まし、私は跳ね起きた。

心臓が激しく鼓動し、冷や汗がだらだらと流れる。
私は目を見開いて、荒くなった呼吸を整えようとする。


また、あの夢を見た。

何度も何度も繰り返し見る、業火に包まれて兄が死んだ日の夢を。

十余年経った今でも鮮明に覚えているあの日の記憶は、眠れば必ずと言ってもいいほど蘇って私を苦しめ続けていた。



ようやく落ち着きを取り戻して腕時計を見ると、時刻はもうすぐ二十一時を示すところだった。

テーブルの上には、昨日借りた本と課題のやりかけが放置されている。

どうやら私は今日の拳銃訓練の事件で少し疲れていたのか、学習室のソファーで眠っていたようだ。


「……頭冷やそ」


私はおもむろにソファーから立ち上がると、散らかした机もそのままに学習室を出た。




辿り着いた先は、学生棟の屋上。

まだ夜は冷える春先の空気を吸い込んで空を眺めると、ずっとうるさかった心臓は大人しくなってきた。



「おい尚、お前何してんだよ」


と、突然後ろから声をかけられ振り返ると、陣平が目を丸くして立っていた。


何をそんなに慌てているのだろう、と首を傾げたが、今自分が座っている場所を再確認して納得する。

私は屋上の縁に腰掛けている状態。
つまり、ぶらぶらと揺らしている足の下には数十メートルという、落下したらただじゃ済まないであろう高さが広がっているのだ。


「そんな心配しなくても飛び降りないよ」

「……お前ならやりかねねぇ」

「ちょっと、私の事何だと思ってんの」


クスッと笑って冗談を言うと、すごく失礼な返事が返ってきた。
はあ?という顔で陣平を見れば、さあな、と誤魔化される。


「マジで一瞬焦ったわ」

「ふふっ、ごめんごめん」


笑い事じゃねぇ、と文句を垂れながら陣平は私の隣に来て寝転がる。

おい、そこに寝るお前も人のこと言えねぇよ。寝返り打ったら永眠だよ。


くぁ〜と大きな欠伸をする陣平のくるくるした髪に手を伸ばすと、いつもはやめろと手を跳ね除けるのに黙って触らせてくれた。

手に伝わるふわふわ感と温もりに安心感を覚え、彼なりの優しさに私は微笑む。


私が満足いくまで頭を撫でると、彼は手に持っていた帽子を深く被った。

そうすると私の方からは彼の表情は見えなくて。



……ねぇ、今の私ってそんなに弱って見える?



そんな言葉は声にならず、ただ闇に染まった夜の空に吸い込まれていった。

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設定タグ:名探偵コナン , 警察学校組 , 降谷零、安室透   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:りもねん | 作成日時:2022年5月28日 14時

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