第16話 ページ19
◇
諸伏と会話しながら資料室に入って行くと、そこには先客がいた。
備え付けのノートパソコンを開いて何かを調べている降谷に、諸伏は声を掛ける。
私もパソコンの画面を覗き込んで見ると、それは陣平のお父さんの事件の記事だった。
「ああ、その事件……当時は大騒ぎだったらしいよ」
「
よっ、と片手を挙げた私をおまけのように扱う降谷に、こんな所で何をやっているのかと思ったら……と諸伏は言う。
案の定降谷は、陣平の警察嫌いの理由を知りたくて調べていたところ彼の父の事件に辿り着いたらしい。
「でも、まさか父親が過去に逮捕されていたとは……」
「その話ならオレも気になったから……松田と仲のいい萩原と加賀利に聞いたんだけど……」
「それ誤認逮捕だよ」
「え?誤認逮捕?」
親指で私を示しながら言う諸伏の言葉を引き継ぐと、降谷は頭にクエスチョンマークを浮かべる。
そこで私は彼に事情を説明し始めた。
「陣平のお父さん、プロボクサーだったんだけどさ……」
諸伏と共にあらかた話し終わると、降谷も陣平が警察を恨んでいる理由に納得したみたいだった。
ただ、彼もやはり何故陣平が警察になりたがっているのか疑問に思ったようで尋ねてきたが、それだけは分からない、と私は肩を竦める。
「だからって言うのも何だけどさ……アイツも悪い奴じゃないんだ。仲良くしてやってくれない?」
「ああ、彼にその意思があればね……」
そう言う降谷の顔は少し意地悪で、まるでいたずらっ子のようだった。
「おっと、こんな時間か……少し早いけど術科訓練棟に移動しとくか」
降谷が腕時計を確認して立ち上がると、諸伏はここで少し調べたいことがあるから先に行っててくれ、とパソコンを開いた。
「私もしらべ──」
「加賀利も一緒に行こうか」
「えっ?ちょっ…」
私も調べ物がある、とパソコンに手を伸ばしたが、何故か降谷に腕を掴まれて強制連行される。
そのまま私を引きずりながら、遅れるなよ、と諸伏に言うと資料室を後にした。
「…ねぇ、いきなり何なの?」
眉を顰める私に彼は、しぃーと人差し指を立てる。
何だと思って彼と同じように資料室を覗くと、そこではさっき廊下で会った時の怖い表情──その時は気のせいだと思っていたが──をした諸伏が何かを必死に調べていた。
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作者名:りもねん | 作成日時:2022年5月28日 14時