夏の夜は

銀ノ魂篇／聞き込み調査 ページ1

「ほう、隻眼の浪人と美人」


隻眼。それは確かに、高杉とAを捜す上では重要な特徴となるだろう。
だが銀時の絵が悪かった。


「悪いが心当たりは……。だがそんなインパクトある顔だったら、見かけた奴は必ず覚えてると思うけどね。ていうか美人かい？ その子」


いえ、こんなにインパクトはありません。本人達もっとスッキリした顔してます。もっと綺麗です。
Aも同じ様な描き方で描かれているところからして、わざとではないのだろう。

そんな絵で見つかる筈もなく、しかし絵の問題点に気付かない銀時は聞き込みを続ける。ちなみに海辺の子供達に聞いた時は絵を見た瞬間逃げられた。


「どっかで見た覚えが……もしかして……。私が言ったって言わないでおくれよ」


で、行ってみた。そしたら本当に居た。
似顔絵そっくりの、インパクトある顔の、しかも御家族全員が。


「え？ ヤダコワイ〜。何何この人達、何か悪い事やったの？ 絶対何かやってる顔よね、殺人？ クスリ？ ｅｔｃ.？ ｅｔｃ.ねやっぱり〜。ｅｔｃ.顔だもの」


鏡を見た事は無いのか、とはツッコまなかった。


「ちょっとアンタら、この浪人達見なかったかい」

「し〜らない。そんな顔見た事もないよ」


赤ん坊も同じ顔かよ、とも、お前ら家族の顔も見た事ねェのか、とも、やっぱりツッコまなかった。


「あっ、でも浪人ならさっき見かけたよ。確かあっちの通りで」


で、行ってみた。そしたら男達が何か騒いでた。


「てめェぶつかっといて挨拶もなしかコルァ！！ 上等だ、喧嘩なら買うぞ、あん？」

「スカした顔しやがって、その腰の刀抜いてみろや！！ それともそいつはただのお飾りか、お侍さんよォ！！」


銀時からその顔は見えず後ろ姿だけだが、見覚えのある派手な蝶柄の着物を着た男が１人、見事に絡まれている。その隣に少女の姿は見えない。


「その通りだ、コイツで斬れるのはせいぜい天下国家ぐらいのもの。お前らの相手はそのへんに転がる棒キレに任せるよ」

「腰抜け野郎！！ そのザマじゃ下の剣もコケおどしか。ロクに女も満足させられねェだろ！！」

「ヘッ、生憎俺ァ女１人を幸せにするために剣を差してんじゃねェ」


そして男が振り返り、その顔が銀時に見えるようになる。


「幼児から老婆まで全ての女性を等しく幸せに導くため剣を振るうのが、フェミニストです」


思ってたよりモアイ感のあったその顔に、銀時はガシガシ蹴りを入れた。

銀ノ魂篇／自分のためだけに→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す