検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:83,979 hit

吉原炎上篇/その眼は例えば、 ページ33

「立った立った。アッハッハッハッ、まだやるんだ」




楽しそうな神威の声が耳に届く。


私は目元をぐいと拭うと、刀をまた握りしめた。




落ち着いた声で月詠が言う。




「これは悪いことをしたの、てっきり死んでいるものと思ったが。だがそのザマじゃ役に立ちそうもないの。妹と選手交代したらどうじゃ」


「ほざけアバズレ、そりゃこっちのセリフだ。今さらのこのこよく来れたもんだぜ」


「紫煙をたどって、地獄からはい出てきたのさ」




まるで、銀ちゃんとお姉ちゃんが会話しているようだった。


懐かしさに目を細めていた私は、床に転がる月詠の煙管に目をやる。


鳳仙の血にまみれていた。




「ご足労痛み入るがね、あんまり来んのが遅いからしゃぶっちまったぜ。おかげで命拾いしたがな」


「……フン、何の話だ」




柵に立った月詠がストンと降りてくれば、百華もそれに続く。




「そんな汚い煙管、覚えがないわい。わっちの煙管はそんな安物ではない。ブランドもの美恥。地下(ここ)では手に入らぬ上物じゃ。失くしたのなら買って返せ」




月詠が短刀を構えた。




「地上でな」


「ハハハ」


「……ったく」




思わず笑う。銀ちゃんはため息をつく。




「やっぱり月詠面白い」


「これだから水商売の女は嫌なんだ。たかりもいいトコだぜ」




チャキ、と、刀を構える音が2回した。


私と、銀ちゃん。




「勝っても負けても地獄だ、こりゃ」


「だったら勝とうよ、私負けるの嫌い」




私達を見渡して、鳳仙が苛立たしげに声を出す。




「死にぞこない共めが。うぬら雑魚が何匹集まろうと、何も変えられぬという事が何故わからん。何故死なぬ。何故立ち上がる。何故、」




銀ちゃんを真っ直ぐに見て、鳳仙は言った。




「貴様が、その眼をしている」




彼の赤い目は、今までに何回か見た事のあるものだった。


例えば柳生家での騒動の時の新八や近藤さんや神楽が、例えば伊東の騒ぎの時の総悟やトシが。


例えば、昔私が憧れた彼らが。




「……気にくわぬ。その眼…………」




鳳仙が埋まっていた馬鹿でかい番傘を再び手に取る。




「その眼を……やめぬかァァァァ!!」

吉原炎上篇/本当の自由はその先に→←吉原炎上篇/沢山の太陽



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (69 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
97人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 真選組 , 原作沿い
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆず(プロフ) - %さん» ありがとうございます! カッコいい女の子を目指しているので、そう言っていただけて嬉しいです! (2019年12月20日 0時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
- 続編おめでとうございます!夢主ちゃんが男前な感じがして凄くドキドキさせられてます!更新頑張ってください!応援してます! (2019年12月19日 21時) (レス) id: 02aec80553 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年12月16日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。