吉原炎上篇/ただそれだけ 2 ページ27
腰を落として、銀ちゃんが刀の鯉口を切った。
心配の隠しきれていないであろう目で彼を見つめれば安心させるように微笑んでくれたから、そっと息をついて私は一歩下がる。
この場に居る敵は鳳仙だけじゃない。
2人してボロボロにされたところに神威が参戦してきたら、それこそ最悪だ。
心配で堪らないけれど、私は鳳仙とは今は戦えない。
「鎖を断ち切りにきたか。この夜王の鎖から、日輪を……吉原の女達を、解き放とうというのか」
「そんな大層なモンじゃねェ。俺ァただ、旨い酒が飲みてーだけだ」
ニヤリとした笑みを銀ちゃんが鳳仙に向ける。
「天下の花魁様に、ご立派な笑顔つきで酌してもらいたくてなァ」
「こりゃあ面白い」
鳳仙の肩に、白い手がポンと置かれた。
「たかだか酒一杯のために夜王に喧嘩を売るとは、地球にもなかなか面白い奴がいるんだね。ねェ、鳳仙の旦那」
ゴォッと、砕ける音がした。
鳳仙によって破壊された元柱の瓦礫が銀ちゃんのすぐ近くに落下する。
「お〜、コワッ。そんなに怒らないでくださいよ」
相変わらず場に似合わない声がすぐ近くで聞こえる……すぐ近くで?
バッと振り返れば、ニコッとしたすぐ後ろの神威と目が合う。
おまけに腰には手が回されていて、逃げようとすれば夜兎特有の物凄い力で阻止されるだろう。
しかもなんか視界が高い。何だここ、兎の像の上?
「離して」
「やだ。だってどうせ戦わないんでしょ、A。俺を警戒して」
「離して」
「俺より先に鳳仙の旦那に殺されても嫌だしさ〜」
「離して」
「大丈夫、不意打ちなんてツマラナイ事しないから」
私から目を離した神威は、鳳仙に視線を向ける。
「心配しなくても、もう邪魔はしませんよ」
「神威。貴様、何が目的だ」
飄々とする神威に、鳳仙が鋭い目を向ける。
「わしの命を獲ろうとした次は、童を手助けし日輪の元まで手引き。そうまでしてわしの邪魔をしたいのか……それとも」
不意に鳳仙が、ニヤリとした笑みを浮かべた。
「母を求める童の姿を見て、遠き日でも思い出したか」
……お母さん?
神威のお母さんは、つまり神楽のお母さんだ。
そう言えば何の話も聞いた事が無い。
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ゆず(プロフ) - %さん» ありがとうございます! カッコいい女の子を目指しているので、そう言っていただけて嬉しいです! (2019年12月20日 0時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
% - 続編おめでとうございます!夢主ちゃんが男前な感じがして凄くドキドキさせられてます!更新頑張ってください!応援してます! (2019年12月19日 21時) (レス) id: 02aec80553 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年12月16日 0時