真選組動乱篇/兄 ページ5
「マジかよオイ」
トシが居なくなってグッと仕事が増えた私は、午後から出発の隊士募集の遠征の前に少し休憩と、テレビを付けた。
瞬間に映ったその顔に、目眩を覚えた。
右上のテレビ名を確認する。『オタクサミット 朝まで生討論』。
愛が重そうとか絶対朝まででも終わらないとか、そういうところはひとまず置いておいてだ。
「何でトシが出てるんだよぉ!!」
しかも新八も居るし。2人で取っ組み合ってるし。
☆☆☆☆☆
刀に付いた機能であるミュージックプレイヤーを有効活用しながら、沖田は廊下を歩いていた。
いつもより静かな分、Aの「何でトシが出てるんだよぉ!!」という謎の叫びが鮮明に聞こえてくる。
土方は無期限の謹慎処分だ。
その事実上の更迭に、しかし、悲しいとは思わない。
それには自分だって加担したのだから。
「意外だったよ」
そんな声が沖田にかけられた。
縁側に座る枯草色を見て、沖田は近くの壁に背を預ける。
「沖田君、君が僕の側についてくれるとは」
そうだろうか。Aはあっさりと納得していたが。
というか、普段の自分達を見ていれば誰しもそうだろう。
毎日暗殺をしている者とされている者が、組むだろうか。
「君らは真選組結成前からの付き合いだときいていた。君は完全に土方派だと思っていたが」
「土方派? そんな派閥があったの、今の今までしりやせんでしたよ」
本心だった。
彼の言う『土方派』についている者達も、そんな自覚など無いだろう。
彼らはいつも通り居ただけなのだから。
「フフ……賢い男だ。望みは何かね?」
「勿論、」
背中を壁に預けるのを止め、歩き出す。
「副長の座でさァ」
その背中に、また「沖田君」と声がかけられた。
振り向かず足だけ止めた彼に、伊東が訊く。
「吉田君だが。彼女はどちらだと思う?」
「土方派に決まってんじゃないですか。アイツは土方さんの事大好きですよ」
「……兄に会えてもか?」
「兄?」
Aの兄は銀時ではなかったか。
彼がこの件に関わっているとは考えられない。
という事は、他に……?
「それだったら分かりやせんね」
沖田はそれまでの無表情を少し崩す。
「アイツ、兄貴は土方以上に大好きなんで」
「……そうか。ありがとう」
温度の感じられない「ありがとう」だった。
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哀(プロフ) - なるほどです!ありがとうございます! (2019年12月17日 18時) (レス) id: d4e761c72f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - 哀さん» すみません! 次巻は用意をしただけで、まだ1ページも書けていないんです。でき次第すぐに公開します (2019年12月17日 16時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
アスミ - パスワード教えて欲しいです! (2019年12月17日 15時) (レス) id: 41e9138099 (このIDを非表示/違反報告)
哀(プロフ) - はじめまして!とても面白かったです!次の作品も読んで見たいのでパスワードを教えて頂けると嬉しいです! (2019年12月16日 16時) (レス) id: d4e761c72f (このIDを非表示/違反報告)
ゆず(プロフ) - %さん» 結構長いのに、2日で読んで下さるなんて…! とても嬉しいです。頑張ります! (2019年12月15日 22時) (レス) id: e1a0e02e53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年11月29日 17時