ただ ページ44
「お兄……」
振り返れば、10年前よりも背の高く、大人になった彼が居た。
腰に瓢箪と刀をぶら下げて、煙管を手に持っている。
「背ェ伸びたな。でもそれ以外変わってねェ。元気だったか」
「うん……」
過激派の攘夷浪士になったとは思えないくらい、彼の声も目も昔と変わらない。
ひょっとして、嘘なんじゃないかと思ってしまう程だ。
彼が、一歩、私に近付いてくる。
そのまま腕を伸ばして、私の背中に手をまわして、ゆっくりと抱き寄せる。
私の頭が、とん、と彼の胸に当たった。
そのまま、私は口を開く。
「……お兄は、何で攘夷浪士に」
「……松陽先生の事は聞いたか」
「うん」
「俺は、分からなくなったんだ。俺達からあの人を奪ったこの世界に、意味があるのか」
だから、壊す。
くだらない、腐りきったこの世界を。
……幕臣がこんな事言っちゃあいけないんだろうけれど、それは凄くよく分かった。
でも、それでも。
「私は壊してほしくない」
ゆっくりとお兄から離れて、彼を見上げる。
「お兄達と別れてからの10年で、大事な人達ができたの。これからもずっと、皆と一緒に居たいんだ」
「そうか……」
こんなんじゃお兄が納得しない事くらい知っている。
だけど私には、お兄がどこかへと去って行くのを、ただ眺める事しか出来なかった。
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ゆず - 亜水さん» 総悟のSが初めて発揮された回。私結構お気に入りです。 (2019年7月16日 20時) (レス) id: e9f8937968 (このIDを非表示/違反報告)
亜水 - 本当だぁ!更新するの早いですね!凄い!あのカエルアニメで観たときマジで苛ついた!総悟あのまま首はねちゃえばいいのにって正直思いました。でもまあ最終的には焼かれてたんで良かったです♪ (2019年7月16日 20時) (レス) id: 9d2ec575ec (このIDを非表示/違反報告)
ゆず - 亜水さん» ありがとうございます!このシリーズを更新するのは私自身楽しいので、ドンドンしていけたらと思います。 (2019年7月15日 22時) (レス) id: e9f8937968 (このIDを非表示/違反報告)
亜水 - 桂優しいな〜再開場面、感動しました! (2019年7月15日 11時) (レス) id: 9d2ec575ec (このIDを非表示/違反報告)
亜水 - めっちゃ面白いです!読みやすかったです!更新頑張って下さいね次も観させていただきますので、よろしくお願いいたします! (2019年7月14日 17時) (レス) id: 9d2ec575ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆず x他1人 | 作成日時:2019年7月10日 22時