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温かい、気がした。
手を伸ばしてその手を取ったら、それは白くて冷たくて怖くなって僕はそれを離した。
周りを見たらみんな地面に倒れている。
血を流して、ボロボロで、最後に何かに助けを求めたように手を伸ばして生き絶えていた。
僕はそれを茫然と眺めて、少し薄くなって起き上がる人たちを上に送った。
笑顔の人、泣いてる人、何かを惜しむ人、寂しがる人、怖がる人。
死んだと気がついた時、彼らはいろいろな反応を見せる。
そして、最後は皆ありがとうと言って美しい光に変わった。
場面が変わる。
何かに足を掴まれて下を向いたら、家族がいた。
僕の家族、いや、家族だった人たちだ。
僕を見上げて何か言ってる。
「郁も、こっちへいらっしゃい」
所詮夢だ。現実とは違う。
血だらけの母は本当ならそんなこと言わないだろう。
隣の父もきっとそんな顔はしない。
泣いて縋り付く翼もそんなことしない。
僕の家族は、そんなこと言ってくれないし、連れて行ってもくれないのだ。
だけど、もしこれが現実だったなら僕はその手を取りたい。
みんながいた時は、1人が好きだったんだ。
みんなと遊ぶより、1人で本を読んだり絵を描いたり、頭の中で不思議で新しく現実ではありえないようなことを想像することが楽しかった。
きっとそれは、すぐ近くに感じられる体温があって、それを見せられる人がいて、それを話せる人がいたからだ。
伸ばされた手を乱暴に振り払って、僕はその修羅場から去った。
たどり着いた場所は、真っ白で誰も何もいない。
僕だけしかいない。
温かくも冷たくも、優しくも酷くもない。
空っぽな部屋。
窓はなくて、頑丈な南京錠がかけられた扉が１つ。
鍵は内側についているということは、鍵はこの部屋にあるのかもしれない。
その鍵を見つけたら、ここから出られるのかもしれない。
外からは人の声が聞こえる。
1人ではない。何人かいるみたいだ。
僕は鍵を探さない。
扉から1番離れた壁に背中をつけ、膝を抱えて座る。
耳を塞いで、目を瞑って終わるのを待った。
何も無ければ、何も失わない。
何もしなければ、何も起こらない。
誰もいなければ、誰もいなくならない。
もう2度と、伸ばされた手を取ることはない。
家族を2度失って、僕は2度死んだ。
だから、もう死ぬのは怖くない。
みんながいる場所だ。
他人の言うそれとは違う、僕にとっての“天国”。
翼。僕はもう生きない。
郁は死んだ。
わかったんだ。
この雨はもう、降り止むことはない。
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ハデス - 普通に番外編として小説で世に出せるよねってくらいいい話でした。何度読んでも面白い。完結おめでとうございます (7月17日 12時) (
レス) id: b5ef1167b7 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - 一気読みさせて頂きました…こんなに泣ける小説初めて読んだ…これ無料でいいんですか…！？本当に素敵すぎる作品を生み出してくださってありがとうございます…！！！ (2023年3月30日 8時) (レス) @page19 id: 267167a797 (このIDを非表示/違反報告)
引きこもり隊 - 読んでてこんなに泣いたの初めてだ。もう、本にして売れると思います。素晴らしい作品を作ってくれてありがとうございます。 (2022年8月6日 16時) (レス) id: af8345609d (このIDを非表示/違反報告)
ニャノこ - とても感動しました。これまで色々な話を見てきましたがこれほど自分の中で共感できる話はありません。翼くんと郁くんがまたあえることを願っています。 (2022年7月27日 22時) (レス) @page19 id: 7687561dfd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 物凄く感動しました。終わり方も物凄く綺麗で納得の行く感じで、占ツク中毒者ですがここまで素晴らしいと思った作品は初めてです。これを無料で読めるこの世界に感謝、っていうレベルです。笑 書いて、共有してくださり本当にありがとうございました！ (2022年5月1日 1時) (レス) @page19 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すえさん
| 作成日時：2019年10月25日 7時
