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忘れられない人がいる。


まだ春になりきれていない昼下がり。
膨らみかけている桜の蕾を背に、
貴方は凛と立っていた。

色素の薄い髪と目は、
淡い背景によく馴染みそうなのに、
埋もれることはなかった。

彼に呼び出された私は酷く客観的で、
別れ話かな、と頭の片隅でぼんやり考えながらも、彼に見惚れていたのかもしれない。

どうしたの? 何の話?
ちょっと、これからについての話。
私もしたいと思ってたよ。

気まずさが混じる何気ない会話を交わして、
言葉を繋げずに口を閉じる。

彼は、私の両手を取ると、
驚く私の目を真っ直ぐに見つめて、

「待ってて」

別れの言葉にしては随分と短かく、抽象的なその言葉は、まるで呪いのようにあの春の日に私を縛った。



人は、人のことを声から忘れてしまうという。

朝、目が覚めて。彼の記憶を辿り、まだ彼を覚えていることに安堵する。

しかし、噂通り、七年という時が彼の声を奪ってしまった。
あれだけ、忘れない自信があったのに。
それ以外は全部、鮮明に覚えているというのに。

忘れられないのに、忘れていく。

私は今も、影のように曖昧な存在を追っている。


零くん。元気でいますか?
今、どうしてますか?

時は無情にも過ぎて、私は二十九になっていた。

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ちゃむPOP(プロフ) - ナツみかんさん» 私も書いてても亀更新なので…笑 更新ありがとうございます! (2018年5月7日 18時) (レス) id: ff2e6e27e2 (このIDを非表示/違反報告)
ナツみかん(プロフ) - ちゃむPOPさん» ありがとうございます……!! すみません、全然進んでなくて(o_o) それでも待っていただけるなんて……本当、涙しか出ないです。頑張らせていただきます!! (2018年5月6日 15時) (レス) id: 691cadf074 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃむPOP(プロフ) - めっちゃ面白いです!続き気になります…待ってます!! (2018年5月5日 10時) (レス) id: ff2e6e27e2 (このIDを非表示/違反報告)
ナツみかん(プロフ) - nanoka(*´∀`)さん» ありがとうございます! まだ展開はぜんっぜん進んでない上、中々更新出来ていないのをお詫びします(~_~;) すみません! このような作品でも気に入っていただけて嬉しいです。ご期待に添えるよう頑張らせていただきます! (2018年3月23日 23時) (レス) id: 9c9f3cfc59 (このIDを非表示/違反報告)
nanoka(*´∀`)(プロフ) - 「もしかし、俺の嫁になるかもしれない」ってセリフのところで、死にました。いつも更新有難うございます。陰ながら応援してます、これからも頑張ってください! (2018年3月22日 21時) (レス) id: 3399c25298 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナツみかん x他1人 | 作成日時:2018年3月13日 11時

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