〇拾弐〇 ページ13
ジュダルは、大きく舌打ちをした。
正体の解らぬ威圧感に気圧され一歩退いてしまった悔しさと、すぐに感情を隠した彼女への苛立ちが、腹の中でもくもくと膨らんでゆく。
────一瞬、イイ
どこも見ているのかも定かではなかった露月の瞳が、紅蓮の光を放ち、ジュダルを真正面から見据えた
ジュダルは興奮にも似た、強固な確信を味わっていた。
────コイツは『王の器』だ！！
『マギ』である自分の誘いを容易く蹴り、ビィビィと鳴きわめく黒いナニカを黙らせてしまった。
そう。絶望へと堕ちた者にしか操れるはずのないそれが露月の気配にひれ伏すかのごとく怯んだのだ。
並大抵ではない、 “王の才能” 。
そんな露月に対してジュダルが抱いた苛立ちは、怒りではなく非凡な己を卑下する彼女への歯痒さからだったようだ。怒気を纏わぬ苛立ちが早くも彼の中で消化されると、続いて沸き起こったのは、露月へのとてつもない “興味” と “期待” 。
「今ここでコイツを無理矢理 絶望に染めるって手もあるが、
それはつまんねェ気がすんだよなぁ…。」
子供が新たな悪戯を考えている時のように嬉々と頭を抱え、声をひそめて呟いた。
────まァ、ここに長く居すぎんのも面倒くさそうだし。
ひとりでに結論を下したジュダルは軽やかな足取りで流れ歩き、露月の脇をするりと抜ける。
「また来てやるよ。今度は手土産持って、な。」
丁重に告げた「私と関わるな」という露月の言葉を、ジュダルは右から左へと聞き流したようである。振り返りもしない、幼くもどこか美麗な後ろ姿に彼は満足げな笑いを投げかけて、黒いナニカに包まれた。
まるで、月が輝く前の未完成な夜空の中に溶け込んだようであった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 149人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
√ルート(プロフ) - 亜純さん» コメントありがとうございます！私の文章力が拙いせいでお待たせしてしまい申し訳ありません。こだわりが強すぎてどうも筆が進まなくて.....不定期更新は続きますが、少しでも皆様も期待に添えるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします！！ (2018年7月31日 12時) (
レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
亜純(プロフ) - 続きが気になります！更新頑張ってください！ (2018年7月31日 0時) (レス) id: 430739def7 (このIDを非表示/違反報告)
√ルート(プロフ) - 返信が遅くなってしまい、誠に失礼致しました。まだまだ稚拙な文章しか書けない私には、勿体無いご感想です。本当にありがとうございます！！主人公の美しい一面も、裏を覗けば苦悩や窮愁に埋め尽くされている。主人公の濃密な人生を、皆様に楽しんで頂ければ幸いです。 (2018年5月27日 16時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
Seere(プロフ) - 一語一句が本当に綺麗で、琴線に触れるものがある文章ですね。主人公の凛とした美しさに儚さを感じます。これから後宮でどんな活躍を見せるのか楽しみです。応援しております(^^) (2018年5月26日 21時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
√ルート(プロフ) - 麻侑さん» ありがとうございますっっ！比喩表現には特にこだわっているので、褒めていただけて嬉しいです！！嬉しすぎて変な笑いが込み上げてきそう(ｸｴﾍﾍﾍﾍﾍｯﾍ←不定期更新ですが見守って頂けると有難いです。 (2018年5月19日 10時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：√ルート | 作成日時：2018年5月18日 0時
