序章 ９ ページ10
それに反して、我が家の空気はどんどん悪くなっていった。
自分の肌の衰えに耐えきれない母は、
私への執着を増し、とうとう精神を病んでしまって療養所送りに。
家の中にいるのが息苦しくて、跡部家にお邪魔することも増えていった。
お母様が家からいなくなると、
「仕事が忙しいから」といって、
ほとんど家に立ち寄らなかったお父様が帰ってくるようになった。
むせ返るようなどぎつい薔薇の匂いを纏わり付けてくるお父様に、
子どもらしく笑いかけることもできることもできず、
いつものようにしていた。
物心ついた頃からの記憶に ''お父様'' という存在がいなかった私には、
いまさら誰に父親面をされたところで、どうも現実味がない。
表情を変えない娘に飽きたのか、
お父様は薔薇の香りの張本人を家に連れてきた。
「香燐、この人はお父様の大切な人だよ。」
お父様が腰に手を巻いて連れてきた派手な女の人は、
お母様とは違う種類の美人だった。
いや、美人なんだろうか。
ファンデーションを塗りたくった肌。
天然とは思えないきつく巻いたブロンドヘア。
香水であろう薔薇の香りが鼻腔に入り込んでくる。
「香燐ちゃんって言うんだー。綺麗な顔してるねぇ、これからよろしくね。」
「............」
口篭ると、女の人は一瞬とても嫌そうに顔を引きつらせて、その後ニッコリ笑った。
「まぁ、いっか。あたしが躾けるわけでもないし。」
それから女の人は、家に住むようになった。
初めこそ一緒にディナーを食べていたけれど、
「あたし２人で食べたいなぁ」と女の人がお父様に言ったその日から、
私の分は自室に運ばれるようになった。
メイドや執事は、
「まだ幼いのに可哀想に」と私に同情の眼差しを向けた。
その不憫なモノを見るような目すらも、
鬱陶しくてたまらならかった。
笑わないように、泣かないように。
お母様がいた頃と何ら変わらないように過ごした。
いきなり家に住み着いたような彼女と親しくなれる気はしなかった。
ましてや、景吾の前と同じように笑うことなんて......
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√ルート(プロフ) - 返信が遅れてしまい、申し訳ありません！！そんなに気に入って頂けるなんて、悩みながら書いた甲斐がありました...(笑)とても励みになります(≧▽≦) (2018年8月20日 2時) (
レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - このお話、大好きです！文才力すごいですね！ (2018年8月16日 3時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
√ルート(プロフ) - くしぇるさん» 処女作でそんなことを言って頂けるなんて感謝感激雨あられです！新作でお会いできたときには、応援して下さると嬉しいです！ (2018年4月28日 11時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
くしぇる(プロフ) - めっちゃ面白かったです！！ (2018年4月26日 21時) (レス) id: bc0907c9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：√ルート | 作成日時：2018年3月27日 23時
