終章 ５ ページ28
よく切れる。
きっと私の髪を切るために用意されていたんだろう。
もう御役御免だが。
自分たちが想像していた攻撃がこないと気づいた先輩たちが
恐る恐る目を開けて、間抜けな表情を見せてくれた。
「これで満足ですよね？」
足蹴にしている先輩の顔の前に、
金属音を響かせてハサミを放り投げる。
あーあ。そんなに泣いたらメイクが流れ落ちますよ？
泣きだした先輩の顔の下に涙の水溜まりができた頃。
リーダー格であろう人が何とか我に返ったようで、キッと目に力を入れた。
「あたしたちは...悪くない、わ。」
「そうなんですか。」
私が適当に相槌を打つと、手で握り拳をつくって言葉を続ける先輩。
必死の抵抗か。ただの強がりか。先輩の足は膝から下が小刻みに震えている。
「あんたが生意気過ぎるから、よ。
ブスが出しゃばってるのはみっと、もない、の、よ...」
だんだんと言葉尻が小さくなっていく。
それは、彼女の肩を叩いたのが───────。
「じゃあ、美人やったらええんやろ？」
侑士君だったから。
目の前の私しか見えてなかった先輩たちは、
背後から近づく侑士君に全く気づいていなかった。
「あ..忍足、くん...これは、ぁ...」
口をぱくぱくさせながら
必死に言葉を紡ぎ出そうとしているが、
貼り付けたような笑みを浮かべる侑士君の前には何もできそうにない。
「何とか言ってみぃや。美人なら、ええんやろ？」
２回目の侑士君の問いかけにも答えられない先輩たちに、
こんな人たちを相手にすることすら馬鹿馬鹿しく思えてくる。
今にも泡吹きそうなほど
目が虚ろになっている足元の先輩を見て、
嘲笑ったような笑顔を作ろうと思ったけれど、
上手くできず、
きっと真顔のままだから凄んだみたいになってしまった。
一呼吸おいて、先輩から足を退けた。
ずっと先輩の腕を固定している状態だったため
少しふくらはぎが痺れたが、
あくまで普段通りに立ち上がった。
「もういいですか？
こんなくだらないことしないで、ちゃんと仕事をしてくださいね。」
そう言って先輩の間を割って通り抜けた。
もう誰も何も言わなかった。
侑士君と一瞬目を合わせると、
彼も先輩の肩から手を離し、
私と同じように身を翻した。
その時に侑士君が先輩たちに向けた視線が、
どれほど冷たく、どれほど恐ろしいものか。
私は知ることはなかった。
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√ルート(プロフ) - 返信が遅れてしまい、申し訳ありません！！そんなに気に入って頂けるなんて、悩みながら書いた甲斐がありました...(笑)とても励みになります(≧▽≦) (2018年8月20日 2時) (
レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
ユッキー(プロフ) - このお話、大好きです！文才力すごいですね！ (2018年8月16日 3時) (レス) id: 127851c6f5 (このIDを非表示/違反報告)
√ルート(プロフ) - くしぇるさん» 処女作でそんなことを言って頂けるなんて感謝感激雨あられです！新作でお会いできたときには、応援して下さると嬉しいです！ (2018年4月28日 11時) (レス) id: 46231e2a59 (このIDを非表示/違反報告)
くしぇる(プロフ) - めっちゃ面白かったです！！ (2018年4月26日 21時) (レス) id: bc0907c9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：√ルート | 作成日時：2018年3月27日 23時
