【d!】新人詐欺師は私の心も騙してる？【ci】 (ページ12)

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10個目の嘘。ページ12

sideA

チーノさんが部屋を出ていった後、中々寝る事も出来ず
1人布団に鼻を埋めて、大好きだった...
...今も大好きな彼の匂いに包まれる。
楽しかった思い出ばかり...
告白された時、初デートに行った日、私の初めてのキスを奪われた日。
それ以外も、彼の家に行ったり、私の家に呼んだり...
また...戻ることは...出来ないのかな...

ｺﾝｺﾝｺﾝ

全く別のことを考えていたからかは知らないが
突然のノックに肩が跳ねる。
ドアが開いて、お盆に小さな鍋を乗せたチーノさんが帰ってきた。
美味しそうなお粥を早く食べたい！
と思うが...まぁ1人で起き上がれるわけもなく
チーノさんに支えて貰って起き上がる。
そんな状態で自分でお粥を食べるなんてもちろん出来ない。
チーノさんが私を壁に寄りかからせて
スプーンでお粥を掬った。
スプーンからは白い湯気が立つ。
それをフーフーして、自分の唇に当てる。
...へ？いや！わかってるよ？！温度計ったのくらいわかってるけどね？！
温度はちょうどよかったのかもしれないけどね？
あーん、と、スプーンを私の口元へと持ってくるが...
いや食べられないよ？ん？
だってねぇ...付き合ってない好きな人からそんなことされても...
無理だよ？ねぇ？

チーノ「食べないんですか...？」

と心配そうに聞く彼に、ボソボソとほぼ聞こえない様な声で
唇つけたじゃないですか...と言うが、もちろん聞こえず。
聞き返されたのでさっきより少し大きく言えば
軽く笑って、からかってくる。
殴りたいこの笑顔。

あぁ...そういえば前も...こんなことあったよなぁ...

現役JKしてた頃だったっけ...

チーノ「ここ！前からAと来たかってん！」

彼の雰囲気に全く似合わないおしゃれなカフェ。
まるでコーヒーも飲めなさそうな子が来るところじゃないよ？
まぁ彼はドアを開けて私を先に入れてくれる。
席に案内されて、彼と対面に座る。
軽くメニューに目を通していれば、彼は私を見ていた。
メニュー見ないの？と聞けば、もう決まってる、と返された。
案外決断力あるんだ...と、最初は思った。

店員「ご注文は？」

『アイスコーヒーとバームクーヘンで』

チーノ「俺は何時ものと...今日はドリアで」

店員「千里君はドリア好きだよねw少々お待ちください」

あぁ...常連...
常連？！
雰囲気絶対合わないでしょ...
なんて言う考えは彼の柔らかい笑みに隠された。