戦いのあとに2 ページ9
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息を切らして昇降口に向かい靴を履きかえようとしたが、焦りが先走ってなかなか履き替えることができない。
しびれを切らして、もうこの際靴はいいやと上履きのまま外へ飛び出すと、遠くに勝己と出久が言い合っている背中が小さく見えた。
「こっからだ！俺は…！こっから…！いいか！？俺はここで一番になってやる！！」
もつれる足をそのままに駆け寄ると、出久越しに勝己とAの視線が重なった。
勝己の目に、涙が浮かんでいる。
彼の涙などもう久しく見たことがなく、Aは驚きを隠せずにその場に棒立ちになった。
勝己は見られたことを悔しく思うようなそぶりでAから目を逸らし、改めて出久を睨み付けると、「俺に勝つなんて二度とねえからなクソが！！！」と言い残して踵を返した。
立ち去って行く勝己の背中を見つめたまま動こうとしない出久へ、Aが後ろから声をかけた。
「わ、わっ！いたのA」
『うん…ごめん。なんか中途半端に立ち聞きしちゃった。なんか、うん、心配、で』
オールマイトがどこからともなく現れ、勝己を元気付けようと奮闘しているのを横目に、二人は向かい合った。
気まずい空気が流れたが、沈黙を先に破ったのは出久で、何の前触れもなく勢いよく頭を下げると、「ごめん！」と謝った。
「隠してた…わけじゃないんだ。いや、こんなのあとから言っても全部言い訳に聞こえるかもしれないけど…」
言葉を濁す出久の歯がゆそうな顔を見て、Aは胸が痛くなった。
出久が真実を打ち明けられない訳を知っている。隠し通さなければならない秘密も。
出久には出久の立場があり、オールマイトとの約束があるのだ。
『…大丈夫』
寂しく思う気持ちをぐっと堪えて、Aはにっこり笑った。
『なんかあるんだよね、理由が。だから大丈夫。いつか、聞かせて。私さ、ほんとに大事なの。出久のことも、勝己のことも』
出久の顔が、張り詰めていた糸がぷっつりと途切れたように歪んだ。
『出久すごいよ！あんたほんとに強くなった！私も頑張る。二人に置いてかれないように、頑張る』
「…うん」
『腕お大事にね。…よし！では私はもう一人の幼馴染を追いかけますかあ！』
明るい調子でAが言うと、つられていつものように出久も笑った。
一緒に昇降口まで戻り、出久は教室へ、Aは靴を履き替えて駆け足で駅へと向かう。
走りながら、勝己のことを思った。
会ってちゃんと、顔が見たいと思った。
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スカイ(プロフ) - コメ返してくれてありがとうございました！めっちゃ面白い...最高です！今後に期待します！ (2018年6月19日 20時) (
レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - スカイさん» 感想ありがとうございます！勢いで書きなぐっておりますが、楽しんでいただけたようで嬉しいです＾＾ (2018年6月17日 23時) (レス) id: 23b7097a95 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - 本当に好みのシチュです！完結まで絶対見ますねー (2018年6月17日 19時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ - 面白いです！頑張ってくださいね！ (2018年6月17日 16時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：卯月 | 作成日時：2018年6月13日 14時
