気持ちの正体 ページ48
.
机を力いっぱいに蹴り倒すと、怒りのこもった目で勝己が言った。
「てめェの家事情も気持ちも…！どうでもいいから俺にも使ってこいやそっち側。そいつを上から捩じ伏せてやる」
鮮烈な宣戦布告だった。
大きく扉を開け放し、来た時と同じ唐突さで去っていく。
その背中を黙って焦凍は見つめていた。
「――さァいよいよラスト！雄英1年の頂点がここで決まる！決勝戦轟 対 爆豪！！」
地面が揺れているかと思うほどの大歓声。
観客たちの視線を一身に浴びながら、焦凍と勝己の両者が入場する。
Aは緊張しながら二人の姿を見守っていた。
すると、ふと焦凍の視線が観客席の方へと向けられた。
誰かを探しているような素ぶりである。
視線はA組の生徒が集まっている場所を何度か巡って―――Aの場所で止まった。
『、…？』
勘違いかもしれないが、目が合っている気がした。
試しに小さく手を振ってみると、焦凍は驚いたように目をしばたき、そのあと小さく苦笑するとAに向かって同じように手を振り返した。
思わずAも笑顔になる。
ちゃんと見てるから頑張ってね、とジェスチャーでAが示した。
「…見せつけてくれるじゃねえかてめェ」
その二人のやり取りに業を煮やしているのはもちろん勝己である。
額に青筋を浮かべながら乱暴に笑うと、焦凍に向かって静かに言った。
「この試合、俺が勝ったら今後一切Aには近付くな」
唐突な無理難題に、思わず焦凍は眉根を寄せた。
勝己のAに対する執着心には薄々気が付いていたが、ここにきてそれが異常なまでの独占欲であるとわかった。
「…俺とAの関係に、お前にとやかく口出しされる筋合いはない」
「へえ。なんだよてめェ、惚れたのか？Aに」
焦凍は返事に窮した。
Aに特別な感情を抱いていることは確かである。
だがその感情の正体がなんであるかはまだわからない。
焦凍は目を閉じた。
焦凍の脳裏によみがえったのは、Aの笑った顔、喜ぶ顔、心配する顔、そして、涙である。
「…Aの涙が頭から離れない」
ゆっくりと目を開けると、焦凍はまっすぐ勝己を見据えた。
「今はそれしか、わからない」
上等だ、と言わんばかりに勝己が笑う。
全力で挑んでこいや、と思った。
てめぇの事情も、Aへの想いも、全部俺が、捩じ伏せてやる。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 299人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スカイ(プロフ) - コメ返してくれてありがとうございました！めっちゃ面白い...最高です！今後に期待します！ (2018年6月19日 20時) (
レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
卯月(プロフ) - スカイさん» 感想ありがとうございます！勢いで書きなぐっておりますが、楽しんでいただけたようで嬉しいです＾＾ (2018年6月17日 23時) (レス) id: 23b7097a95 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - 本当に好みのシチュです！完結まで絶対見ますねー (2018年6月17日 19時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
スカイ - 面白いです！頑張ってくださいね！ (2018年6月17日 16時) (レス) id: fe3517b453 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：卯月 | 作成日時：2018年6月13日 14時
