ロイヤルミルクストーリー (ページ16)

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「焼き菓子作るなんて珍しいな」

「おーくら」

久しぶりに見る顔に口元が綻ぶ。

「お前こそ早いの珍しいやん」

朝はめっちゃ弱いのになぁって揶揄すると、仕事やもんそれくらいしゃんとするしって、拗ねた口調子供か。

「今度は何処行くん？」

「北海道でタラバ見てくる。お前には… 」

「夕張メロン！」

「わかった。今夜持ってくわ」

「え、日帰りなん？」

「うん。家行っていい？昨夜行けへんかったし」

「 …… るみちゃん居るんちゃうの？こないだからこっち帰ってきてるって聞いてるよ」

「あー、入れ違いやわ」

「そっか … 」

嬉しいような複雑な。

あかん、幸せな気持ちが逃げてまう。

「ヤス」

「ん？」

直ぐ近くに大倉の顔。

頰に息が触れて擽ったい。

「行ってきます」

「 … いってらっしゃい」

俺らの高校生って、

マルとおーくらと、俺。そして、あともうひとり。

るみという女の子。

俺ら男3人の幼馴染みにマドンナ的存在やった綺麗な子。

大倉の彼女やった子。

男前の大倉とはものすごくお似合いで、誰もが羨むカップルやった。

でもそれは周りだけで、俺は。

俺は偽物の笑顔を顔に貼り付けて、どうしようもない想いに打ちのめされていた。

懐かしい、嫌な思い出。

今でもそう。

時折自分が嫌になる。

だからかな、佐野を見てるとかわいいなぁと思って、また違う懐かしい気持ちが蘇る。

俺のこの腐った感情が浄化されるような、まさしくアオハル。

何をゆーてんだか。

自嘲して、まだ温かいマカロンを口に運ぶ。

「 … おいし」

少しだけ幸せな気持ちに戻れた。

でも、あのキスは許さん。

不意打ちにもひどすぎる。

── ちょっとだけ少しだけ、きゅんってきたん絶対言わへん。

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