#4 ページ4
.
『え、な、なに、なんで』
と「いや、隣のお姉さんがすげえ怖い顔して俺のステッカー睨んでんな、と思って」
はっとして、慌ててシールをカバンに突っ込む。
『違、これは今朝たまたま後輩に押し付けられて、だから、としみつが私の元彼とか全然知らないんだけどノリで』
元彼のグッズを大事に見つめているかのような姿を見られて、めちゃくちゃ恥ずかしくて慌てて弁解する。
と「ふ」
『っ、ほんとに！』
と「変わんねえな。慌てると早口になんの」
くくくっと笑う。
最悪だ。
どーせ三年ぶりに再会するなら、ばしっとかっこいい女ぶりたかった。
赤くなった顔を隠すように、下を向く。
と「ていうか何してんの？東京で」
『…こっちのセリフなんだけど』
と「俺は仕事とかでちょいちょい来る。東京」
『そうなんだ。私は一年前からこっちで働いてる』
と「まじ？知らんかった」
『そりゃそうでしょ』
久しぶりの再会とは思えない、あっさりした会話。
としみつの横顔を見る。
写真の技術じゃなかった。
やっぱり、かっこよくなった。
と「…飯は？」
『え？まだ』
と「俺も」
『そっか』
としみつが私を見て、また目を逸らし、言った。
と「食い行くか」
『えー、一緒に？なんで？』
正直、行きたくなかった。
これ以上深入りしたくない。
また感情が、掻き乱れる。
と「はぁ？なんでって、いいやん。運命の再会だし」
『運命って』
と「あ、いや、そういう意味じゃなくて。間違えた、奇跡の再会。運命は違うわ」
慌てて言い直すとしみつを見て、ふっと笑いが溢れる。
『としみつもなんも変わってないじゃん』
と「んなことねーよ。かっこよくなっただら？」
『はいはい、なったなった』
カバンを手にとって立ち上がる。
と「帰んの？」
『一緒に行くんでしょ、ご飯』
気まぐれ女にも程があるけど。
昔のとしみつの片鱗を見て、ご飯ぐらいいっか、って気持ちになった。
と「出たよ、気まぐれ」
『大人の女を、どんな店に連れてってくれるのー？』
と「どこが大人の女だよ。なんも変わってねえがや」
『綺麗になったでしょ！』
と「うん」
否定の言葉が来ると思い込んでたから、驚いて黙る。
と「最初、お前って気づかんかった。バカ綺麗になった」
真っ直ぐ私を見て、真顔で言う。
あぁ、やばい。
『…だから、お前って言わんでって』
と「いつもそれ怒ってたな」
いこ、と席を立ち、カフェを出た。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 577人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あらん - 最初は切なかったのに最後はキュンキュンで涙止まりませんでした…！緑さん推しなので余計に刺さりました笑 (2022年8月25日 3時) (
レス) @page37 id: 744e90fb9c (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初から読み返して、またキュンキュンしてしまいました…。掻っ攫っていく緑さんのかっこよさといったらもう………！！！素敵な作品をありがとうございました！ (2020年11月28日 15時) (レス) id: 3c19ec381c (このIDを非表示/違反報告)
赤RINGO(プロフ) - 初めまして、ちゅっちゅさんの作品にどハマりしております。いつもドキドキをありがとうございます。これからも楽しみにしております！ (2020年1月11日 20時) (レス) id: 2a53949147 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅっちゅ(プロフ) - まっちゃさん» コメントありがとうございます！とても励みになります！！パスワードがかかっているものは、これから公開予定です。まだ書き始めたばかりなので鍵かけております。まぎらわしくてごめんなさい！！ (2019年12月31日 1時) (レス) id: dbde00ccb7 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - はじめまして…！ いつも次どうなるんやろってワクワクしながら読んでおります！他の作品も読ませていただいているのですがパスワード認証のあるものもあってそのパスワードを教えて貰うことは可能でしょうか？ お返事頂けますと幸いです…！これからも応援してます！ (2019年12月30日 9時) (レス) id: e2582815ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちゅっちゅ
| 作成日時：2019年10月25日 1時
