ペチカな君と 【東海オンエア】

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次の日。

嫌なことがあるとつい酒に逃げちゃう、って前言ってたからなんとなく気がかりで。

編集の手を止めてAにLINEする。



LINEを交換してくれたのは、つい最近。

嬉しくて毎日連絡してたら、うざがられて一回ブロックされそうになった。



今日の夜なにしてんの、ってLINEを送る。

数分経って、返信。

『サユリと飲みに行く』

俺の嫌な予感は的中した。

やっぱり酒に逃げるらしい。



サユリ、サユリ…脳内に、もう顔も思い出せない派手な女がぼんやり浮かぶ。

初めて出会ったあの日。

またクラブに行くんだろうか。

え、やべえ、めっちゃ嫌だわ。

ナンパされるやん。

びっくりするぐらい可愛いもんA。

そわそわして、居ても立っても居られない。

行くななんて言えるわけないし、どうしようもない。

無理やりAのことを考えないようにして、編集を再開する。



て「あー、だめだ」

考えないようにする、って難しい。

あと1時間ぐらいで終わるはずだった編集が、3時間経ってもまだ終わっていない。

集中力ゼロ。

時計を見ると、23時。

飲みすぎんなよって送ったLINEは、ずっと既読がつかない。

さっきから何度も電話するか迷って、我慢した。

そろそろ一回ぐらい電話してもいいかや。



Aに電話をかける。

5コール目、そろそろ諦めて電話を切ろうとしてた時、コール音が途切れた。

『…てっちゃん？』

電話の向こうが、ばかうるせえ。

はぁ。

やっぱクラブ行ってるやん。

いや、いいんだけどね？

彼氏じゃないんだから、怒る権利ないしね？

て「飲みすぎてないかなって思って」

『うん、飲みすぎたよー』



出会った時ぶりに聞いた、呂律の回らない声。

俺の背中で、全部忘れたいって言った。

あれも、虫眼鏡のことだったんだな。



て「楽しい？」

『超楽しいよ〜』

て「そっか。…よかった」

『…嘘』

て「ん？」

『ぜんぜん楽しくない』

急に小さくなる声。

て「…もう帰ってきなよ」

『うん、そーする』

て「迎え行くわ」

『いい。終電まだだから』

あっさり断られる。

て「じゃあ、降りる駅まで迎えに行く」

食い下がる。

そんな悲しい声されたら、ほっとけん。

『…わかったよ、ありがとう』



電話を切って、すぐパソコンを閉じて家を出る。

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