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虫眼鏡とにこにこ話すAに声をかける。
て「A。もう遅いから家入りなよ」
『なんで?大丈夫だよ』
Aが彼女の存在に気付く前に、なんとか家に戻らせたい。
傷つくの、見たくないんだよ。
俺の優しい努力も虚しく、車の中で携帯をいじっていた虫眼鏡の彼女が、待たされてしびれを切らせて車から降りてきた。
あーあ。
彼女が虫眼鏡に近寄る。
「ねぇ、トイレ行きたいんだけど…」
虫「あぁ、ごめんごめん。家まで我慢できる?僕の実家で借りてく?」
「夜遅いし大丈夫。早く帰ろ」
あーー。やめてやってくれ。
Aは、無表情で二人のやりとりを見ている。
虫「じゃあA、帰るわ」
『うん!またね』
虫眼鏡が振り返ると、急に笑顔で手を振る。
虫眼鏡が、車の脇にいた俺の方へ近づいてくる。
虫「てつや。また明日」
て「諦めねーから、俺」
Aには届かない声で言う。
虫「Aってさ、見た目きつそうだけど実はいい子じゃん。僕らみたいなめちゃくちゃな男じゃなくて、普通に幸せになってほしいんだよね」
虫「昔は僕のこと好きとか言ってる時期もあったけど、それも乗り越えたしさ、ちゃんとした男見つけてほしいんだよね」
て「俺はちゃんとしてないってことかよ」
虫「ちゃんとしてはないだら」
虫眼鏡は、Aはもう自分のことを好きではないと思っているらしい。
虫「じゃあ」
彼女にせかされ、車に乗り込み、虫眼鏡は帰っていった。
後に残されたのは、俺と、A。
て「…大丈夫?」
立ち尽くすAに近寄る。
『わかってるんだけどね』
泣きそうなのか笑いそうなのか、どっちかわからん顔で俺を見る。
『頭ではわかってんだけど、いざ目の前で見ると、きついねやっぱ』
て「、A」
『って、こんなことてっちゃんに言ってもしょうがないよね』
て「いや、いつでも俺は、」
『ありがとね、おやすみ!』
俺に喋る隙を与えないまま、再び家の中へ入ってしまった。
て「あー」
思わずその場にしゃがみこむ。
どーすりゃいいんだよ。
俺だっていっそのこと諦めたい。
好きが報われないって、思ってたよりきつい。
Aが傷つくと、同時に俺も傷つく。
でも好きなんだよなぁ。
久しぶりすぎる本気の恋は、諦められそうにない。
ゆっくり立ち上がって、自宅へとゆっくり歩いて帰る。
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ちゅっちゅ(プロフ) - フラワーさん» てっちゃんらしさ、出てたでしょうか、、よかったです、、!いつもありがとうございますがんばります!! (2019年7月7日 23時) (レス) id: 28ddd181e2 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅっちゅ(プロフ) - なぁさん» 虫さん自信なかったのでそう言っていただけてとても嬉しいですありがとうございます、、!!次回作ちまちま更新していきますのでよかったら見てやってください!! (2019年7月7日 23時) (レス) id: 28ddd181e2 (このIDを非表示/違反報告)
フラワー(プロフ) - 完結本当にお疲れさまでした。リダらしいというかありえる感じがよかったです。他の作品も引き続き楽しませていただきます。頑張って下さい。 (2019年7月7日 21時) (レス) id: 34909526e5 (このIDを非表示/違反報告)
なぁ(プロフ) - 更新お疲れ様でした!虫さんと主人公の関係がとても好きでした…ゲロ甘エンド!てっちゃんらしいデレデレでとても素敵でした!もし次回作があれば、そちらも読ませていただきます! (2019年7月7日 20時) (レス) id: 07945c6d2e (このIDを非表示/違反報告)
ちゅっちゅ(プロフ) - フラワーさん» コメントありがとうございます!とても励みになります〜!!そろそろクライマックスですがんばります! (2019年6月21日 15時) (レス) id: 28ddd181e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゅっちゅ | 作成日時:2019年4月14日 2時