ペチカな君と 【東海オンエア】

#11 ページ11

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貝殻拾って、ワカメ投げて。

なんだかんだ楽しんでたら、日が暮れてきた。



『わ、めっちゃ綺麗』

夕焼けで、海が赤く染まる。

お前の方が綺麗だよ、なんて。

冗談でしか言ったことなかったけど。

まじでお前のが綺麗。

写真撮りたい、って離れたところに置いてた鞄を取りに行こうと振り返ったAの手を掴む。

我慢できん。

Aの手をぐっと引いて、抱きしめた。



て「A、俺、」

『てっちゃん』

て「俺、まじでAのこと」

『てっちゃん！』

Aが俺の胸を軽く押す。

しぶしぶ離れて、Aの顔を見る。

『てっちゃん、あたし、好きな人いる』

胸がぎゅっと痛んだ。

まじかよ。

『女遊びしてる適当な奴だと思って、たまにはいっかってデートしたけど』

『てっちゃんすごく優しいし、いい奴だなって思ったから。ちゃんと言っておく』

て「…うん」

『好きな人がいるから、ごめん』

あー、へこんだわ。

好きな人。

Aが、好きって思う奴って、どんだけ幸せ者なの。

なぁ、どんな奴なの？

誰？

聞きたい気持ちをぐっと抑える。



て「でも、彼氏じゃないんだら？」

『彼氏じゃない、けど、でも』

て「じゃあ俺がAのこと好きでいても、問題ないよね」

『…うーん』

困らせてごめん。

でも、全然諦められん。

て「絶対お前を落とす」

Aは、困った顔でため息をついた。

いつのまにか、綺麗だった夕日は沈んでて。

『写真撮りたかったのに』

と笑った。

て「ごめん」

『帰ろっか』



帰りの車、俺の音痴な歌を笑って聴いていたAは、いつのまにか眠っていた。

絶対落とす、って言ったけど。

どーやったら落ちるのかまったくわかんねえ。

いっぱい女抱いて、スキル磨いてきたはずだったのに。

結局なにも成長してないな、俺。

て「A。ついたよ」

『…あ、ごめん。寝てた』

て「大丈夫。ほんとにここでいいの？」

また居酒屋の前。

営業が始まっている店内から、人の声が漏れている。

『近いから大丈夫！楽しかった、ありがとう』

降りようとするAの手を掴む。

て「またデートして？」

また困った顔。

て「俺、諦めんから」

『…おやすみ』

困った顔のまま笑って、車から降りた。

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