アソビゴコロ３【川村壱馬】

瞳 ページ8

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『次右、』


壱｢知ってる｣


『あ、ここ左で…』


壱｢うん｣


『あと、しばらくまっす…』


壱｢知ってるっつの！Aナビいらねぇ｣






し、知ってる？
たった1回来ただけのわたしの家を？

しかも学校からの帰り道じゃないのに
なんで、どうしてわかるの？






『すごいですね…』


壱｢俺何でも出来るから｣


『さすがです、スーパーリスペクト…！』






はあ？ って笑われて
でも、それが心地よくて

繋がれた手の温もりが
壱馬先輩が隣にいることを実感させてくれる

…好き
何回言っても足りないよ
こんなに何かを好きになったこと、ないよ






壱｢ここ、だよな？｣


『そ、です』






…バイバイかなあ
送ってもらえただけで十分なのに
まだ一緒にいたい、と思ってしまう

わがままが加速する

わたしなんかが
壱馬先輩に愛されたいなんて思っちゃいけないのに






壱｢相変わらずでっけー家だな。早く鍵開けろよ｣


『え？あ、ちょ…』


壱｢…なに？入っちゃだめなの？｣






スタスタと玄関まで歩いて
まるで家に上がろうとしてるみたい

入っちゃだめなの、って…
入るつもり…！？






壱｢早く｣


『わたしの家に、入るんですか？』


壱｢入んなかったらここまで来ねぇよ｣


『な、なん、で…』


壱｢…Aの全部、俺で染めたいから｣






だから早く開けろ、ばーか って
…なにそれ
どこまでドキドキさせたら気が済むの？

壱馬先輩にお家染められたら
お家のこと好きになっちゃう

帰るのが憂鬱だったこの家が、特別になる
鍵開けて、壱馬先輩は お邪魔します ってちょっとお辞儀してから中に入った
…礼儀正しい
こういう所、大好き

壱馬先輩に気づかれたドット柄の傘
傘立てに立てかけた

この傘も、特別になった






壱｢リビングここ？｣


『そうです！今、飲み物持ってきますね』






冷蔵庫にあったお茶をコップに注いで、壱馬先輩に持って行く
ソファに座ってた壱馬先輩 ありがとう って言って笑ったの

途端に苦しくなって、また好きになった






壱｢…Aはさ、｣


『はい、？』


壱｢…どんなことがあっても、俺が好き？｣


『好きです』


壱｢…どんな過去があっても、俺が好き？｣


『好きです』


壱｢…ほんとに？｣


『絶対絶対、嫌いになったりなんかしません』






わたしを見る壱馬先輩の瞳は

…揺れていた




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