アソビゴコロ３【川村壱馬】

痛み ページ2

壱馬side.




…なんで出ねぇんだよ

帰ってる途中で気づかないとか？
ユウちゃんと寄り道でもしてんのか？

いつまでも出ないAに
家に行ってしまおうかと思ったけど
よく考えたらあいつの家を知らない

俺が呼ぶばかりで、あいつの家には行ったことがない

暗い家、と言うAの家






壱｢…出ろよ、！｣






雨音とコール音が鼓膜を支配しようとしていた時
コール音が消えた

その代わりに聞こえたのは もしもし という小さい声






壱｢遅い｣


『……ごめんなさい』






…あぁ、もう
そんなことが言いたいんじゃない
そんなこと言わせたいんじゃない






壱｢お前、今どこにいる？｣


北｢壱馬、俺｣


壱｢は…？｣






この声…北人？

なんで、なんで北人がAと一緒にいんだよ






壱｢…なにしてんだよ｣


北｢たまたま帰りに会ったんだ。傘ないって言うから今送ってる｣






傘ないって…
俺に置いてったからだろ？

…バカ野郎
自分で傘持ってたら、北人と帰ることなんかなかったじゃんか






壱｢…ふざけんなよ。何勝手なことして、｣


北｢あは、なにそれ。壱馬が言えることじゃないよね｣


壱｢…どういう意味だよ。Aは俺の玩具だ｣


北｢…それ、逃げてんだよ。いつまでそうしてるつもり？｣


壱｢まじで意味わかんねぇ。何が逃げて…、｣


北｢俺は、どんな時でもきゅまちゃんのこといちばんに考えて、守れる自身あるよ｣


壱｢…何言って、｣


北｢今一緒にいるのは、俺だから。壱馬がそんなだときゅまちゃんのこと…、Aのこと、もらうから｣


壱｢もらう…？おい、ちょっと待て、北人…！！｣






有無を言わさずに切れた電話

…なんだよ、今の
玩具って言うことが、逃げてる？
…むかつく、まじでむかつく

あいつもあいつでなんで北人と一緒に帰ってんだよ
俺が好きなんじゃねぇの？

……愛想、尽きたか
やっぱり、所詮俺はそういう存在なんだ

人間の愛なんて、そんなもん
人の心は変わるんだ
何考えてるかわかんねぇ俺より
優しくていつも笑ってる北人の方がそりゃいいに決まってる






壱｢…いてぇ、｣






Aの顔思い出したら
途端に胸が痛みだす

…あの時と、同じようで違う痛み

Aも…俺から離れていくんだろうか
あの人みたいに、俺の顔を見るだけで泣いて、苦しんで

俺はきっと誰からも…愛されることはないんだ




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