秘められた恋が叶うまで【G's】

チョコとミルクティー ページ20

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リビング、暗いのに
誰もいないはずなのに
キッチンの方から物音がする

…おばけ？
やだな、
そういうの苦手だから

ゆっくりゆっくり歩いてキッチンに近づく
ぼんやり灯りがついてるのが見えた
たぶん冷蔵庫が開いてる
冷蔵庫の前にはしゃがみこんでる、誰か

柑橘系の爽やかな香りが強くなった
香水、かな？
おばけじゃない
そう思うと安心した

亜嵐くんでも佐野さんでもない

だけど邪魔するのも悪いかなってバレないように
来た道を戻ろうとした
そしたら暗闇に目が慣れなくて
テーブルの脚に思いっきり足の指ぶつけて
痛い…っ！って思わず声出しちゃった

え！？ って聞こえてきた声
…あ、このちょっと鼻声な感じ
久しぶりだ






『ゆ、裕太くん…』


裕｢電気つけて歩きや、危ない｣


『ガサゴソいってたからおばけかと思って…』


裕｢あぁ、ごめんごめん笑｣






パチン、とついた電気
笑ってる裕太くんが見えて
なんだか一気に力が抜ける

裕太くんて、柑橘系の香水なんだ

痛さと安心感でその場に座り込む
裕太くんはそんなわたしに近づいて
目線を合わせるようにしゃがんだ






裕｢寝れへんかった？｣


『…うん、ちょっと』


裕｢くっそつまんないお笑い動画とか見てみ。寝落ちすんで｣


『えー、笑』


裕｢信じてへんやろ｣






裕太くん、疲れてる顔してる
今帰ってきたのかな
久しぶりのお家だし、ゆっくり休まないと






『裕太くん、』


裕｢…ここ、何したん｣






眉を寄せて、わたしの鎖骨に触れた
触れた瞬間
裕太くんの顔が変わった

触れられたことと
なんだか見られたのが恥ずかしくて
裕太くんから少し距離をとった

ぶつけた、と苦しい嘘をつこうとしたら
裕太くんが驚いたような顔をしながら






裕｢…大丈夫やったん？｣






と、聞いてきた

こうなった理由も
何があったのかも
何も知らないのに
どうしてこんなこと聞くんだろう

単純な疑問が頭に浮かんだけど
裕太くんが ハッ としたように
目を逸らしたから
またちょっと胸が痛む

裕太くんはあんまり目を合わせて話してくれない
いつもどこか素っ気ないような態度で
無理して笑ってるみたい






裕｢あげる｣






わたしが何も答えずにいたら
カバンから高そうなチョコとミルクティーのペットボトル渡してくれた

言葉を発する間もなく
裕太くんは立ち上がってリビングから出て行ってしまった

しばらく、裕太くんが買いそうもない
チョコとミルクティーを眺めてた




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