角砂糖に溶ける夢４【北×樹】

引っかかって ページ10

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午後になってから少しして
エレベーターホールから樹くんが出口に向かって歩いてきた






凪｢ちょっと来たじゃない｣


『見えない見えない、わたしには見えない…』


凪｢逃げないの！ちょっと話してきなさいよ｣


『嫌です…！』


凪｢藤原くーん！久しぶり、ちょっとちょっと｣


『なっ…ぎっ…さん…』






今の感情を表すとしたら、絶望

面と向かって話すなんてむり
ほっくんにいくら
樹くんが本心を言ったわけじゃないって言われたって
わたしは樹くんを好きだった自分を否定されたのと同じようなこと
ほっくんを突き落としたのだって…
まだ消化できたわけじゃないのに






樹｢凪さん、お久しぶりです｣


凪｢相変わらずイケメンね｣


樹｢いや、何言ってんすか笑｣


凪｢Aちゃんが話したいって｣


『え！？』


凪｢かわいいAちゃん貸してあげるんだからちゃんと話してね｣


樹｢…はい｣






樹くんが凪さんから視線を移した
息が詰まる感覚






樹｢Aさん、行こ？｣






見つめられながら名前を呼ばれるのも、久しぶり
ドキドキ…してる？
やだ、もう樹くんのこと好きじゃないのに

消化し切れてない気持ちが、蓋を開けて溢れてきてしまった

凪さんに背中を押され、受付を出たら
樹くんが歩き出す

ついていくのを戸惑ったら
来ないの？って顔してわたしを見る
小さく歩き出したら
安心したような顔して樹くんも歩く

エントランスの端の方
大きな観葉植物の裏
樹くんと向き合った






樹｢…ごめんなさい｣


『え、？』


樹｢Aさん、もう俺の顔なんて見たくないんじゃないかな…とか思ったから｣


『っ、そんなことない…！』


樹｢…ほんと？｣


『うん、元気そうで…よかったよ』


樹｢どこまでも、優しいんですね｣






困ったように笑って
前髪をくしゃ、と握った






樹｢来週から、またここで仕事させてもらうことになりました｣


『あ、うん…』


樹｢あんなことしたのに…みんな俺を受け入れてくれました｣


『みんな…樹くんのこと好きだからだよ』


樹｢…っ、そ、なんですかね｣


『樹くんは…理由もなしにそんなことする人じゃないってみんなわかってるから』


樹｢Aさん、俺…変わりたいんです｣


『…うん』


樹｢そばで、見ててくれますか？｣


『…』






すぐに返事ができなかった
まだ、利用してただけという言葉が
心に引っかかっていたから




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