角砂糖に溶ける夢４【北×樹】

一から ページ7

北人side.




Aに会ってパワーもらってから
樹と約束した焼肉屋に来た

集合時間の10分前に行ったのに
樹はもう既に店の前で待ってて
おれを見た時、らしくもないお辞儀をした

樹なりの…ケジメなのかな






北｢肉選ぶのめんどくさいから食べ放題のでいいかな｣


樹｢北人さんがいいならそれで｣


北｢お前の意見はないのかよ｣


樹｢じゃあ、俺もそれで｣


北｢じゃあ、じゃ意味ないじゃんか｣






何となく、おれに気使ってんだろうなって感じる
見えない分厚い壁をおれとの間に作ってる

そんなのいらないのに

ちゃんと話すために酒はやめた
頼んだウーロン茶で乾杯して
ひと口、飲んだ

何から…話そう

ウーロン茶を見つめながら考えてたら
樹が小さく息を吐いた






樹｢…北人さん｣


北｢…ん？｣


樹｢………ほんとに、申し訳ありませんでした｣






目を伏せて
また小さい声で確かに言った






北｢なんで今更謝っ…｣


樹｢…俺、復讐するって決めて生きてきたのは確かなんです。でも、北人さんと過ごす度、その決意が揺れてった｣


北｢樹、｣


樹｢でも、北人さんが言ったように…今更、俺が真っ当に生きようとしたって…無理に決まってるから…｣






やっぱり、樹は苦しんでたんだ
誰にも言えない過去抱えて
ずっとずっと…苦しんでた






樹｢だけど…あの日から…北人さんの倒れてる姿が頭から消えなくて…毎日夢に見て…何度も、もう死のうって、思いました｣


北｢…っ、死ぬのはだ…！｣


樹｢ダメも何も、今俺ここにいるじゃないですか｣


北｢あ…、｣






…そうだ、

まさか、夢に見るくらい樹が気にしてたとは
一体どこで…ひとりでそんな苦しみに耐えてたっていうんだろう






樹｢…でも、いつの間にか俺が希望を持てるようになってたんです。北人さんとか玲於さんとか…Aさんのおかげで｣


北｢A…｣


樹｢生きたい、って。俺も何も気にせずに笑いたいって、思ってて…。だから、ちゃんと北人さんに謝って、一からやり直そうかなって考えたんです｣


北｢えっ…、いいじゃん！誰も樹のこと責めないから、早く戻ってき、｣


樹｢戻りません｣


北｢…え？｣


樹｢戻ったら…一からやり直せないじゃないですか｣






そう言って笑った樹の目は
悲しさと寂しさで満ちていた




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