角砂糖に溶ける夢４【北×樹】

自分の口から ページ38

.




17時前
ほっくん、お家にいるかな
出かけてたらどうしようかな

マンション前まで来て、ゆっくり息を吸ってはいた
ただでさえ距離ができちゃった今
ほっくんに会うのが少しだけ…こわい






樹｢緊張します？｣


『うん…、でも大丈夫』


樹｢強がらなくていいですよ。Aさんがどれだけ北人さんのこと好きかぐらい分かってるから｣


『…うん』


樹｢北人さんはそんなに器の小さい人じゃないでしょ。笑ってないと心配されますよ｣






樹くんの言動全てが 大丈夫 と言ってくれてる
今日くらい、自分で






『樹くん、わたしひとりで行く』


樹｢…じゃあ、ここで待ってる｣


『うん…、待ってて』






樹くんに笑いかけて、エレベーターに向かった
何度も何度も歩いたほっくんの部屋の前までの廊下
いつもと違う景色に見えた

ドアの前に立ってインターホン鳴らしたら
すぐに はーい ってほっくんの声がした
緊張してなんて言えばいいのか迷ってたら
モニターを確認したのか A？ と呼ぶ声がして
ゆっくりとドアが開いた






北｢どうした？｣


『あ、の…』


北｢…寒いでしょ。入りな｣






今の一瞬で、全部理解された気がした
ほっくんと過ごした時間は
もしかしたら家族よりも長いかもしれない
言わなくても伝わること
隠してもバレちゃうこと
今までたくさんあった

わたしのちょっとした声とか表情の変化で
ほっくんはなんでも気づいてしまう






北｢あ、よかった。A用のココアまだあった｣


『いいよ、』


北｢寒がりなんだから体温めないと｣






…目、合わせてくれない

テーブルに置かれたココア
湯気が立ってて、今すぐには飲めそうにない

ココアに手を出さずにいたら
ほっくんは何かを察して
顔が見える向かいじゃなくて
ひとり分隙間を空けて同じラグに座った

またほっくんの優しさに甘えたら、話せなくなる
その前にちゃんと自分の口から言わなくちゃ






『ほっくん、あのね、わたし…やっぱり樹くんが、』


北｢…うん、知ってた。ずっと｣


『…ずっと？』


北｢好きな人だから、わかっちゃうことっていっぱいあるんだよ｣


『…、』


北｢おれが怪我して、樹がいなくなって、Aの意識がおれに向いてるのがわかって、ちゃんと好きになってくれようとしてるのがわかって、表面的でいいからこのままAがおれのそばにいればいいのにって思ってた｣






横、向けない
ほっくんは今どんな顔をしてるんだろう




.

お願い→←伝えなきゃ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す