角砂糖に溶ける夢４【北×樹】

昔の話 ページ15

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結局、全部樹くんが買ってくれた
しかも荷物持ってもらっちゃって
わたしが持つ って言うとちょっと怒るの

理不尽






樹｢はい、着いた｣


『え？』


樹｢俺ん家です｣


『あ、駅から近い』


樹｢近いとこ選んだ。いろいろ楽かなって｣






駅チカって家賃高いのに…
そう思いながら樹くんについていく

…あれ、よく考えたら
どうしてわたし樹くんについてきてるんだろう

樹くんの家行ってなにするの？
でも、服買ってもらっちゃってるし…
今更 行かない なんて言える雰囲気でもない

黙ってついていったら
荷物持ちながら器用に鍵開けて
どうぞ って先にわたしをいれてくれた

…あ、だめだ

入った瞬間、樹くんの匂いに包まれる
わたしここにいたら、だめになる






『樹くん、やっぱり帰…っ、！』


樹｢…嫌です｣






振り向きながら伝えようとしたら
振り向く前に後ろから抱きしめられた

樹くんの吐息が首筋にかかってくすぐったい
嫌だ、って何回も何回も
小さな声で言ってくる






『わ、わかった…。わかったから、』


樹｢…帰んない？｣


『帰んない、です』


樹｢…入ってください｣






体が、熱い

中に入ったら
わたしと選んだ家具たちが並んでて
懐かしさでいっぱいになった






樹｢Aさん｣


『…ん？』


樹｢俺、Aさんと向き合うためにちゃんと話がしたくって｣


『…うん』


樹｢…でも、嫌われるの怖くて今まで話せなかったんですけど｣


『うん、』


樹｢聞いて、くれますか？｣






不安でいっぱいの顔

わたしは、何を聞いても大丈夫


頷いたら、ホッとしたように息を吐いて
わたしをソファに座らせた

顔見られたくないから って理由で
樹くんはソファの前のラグの上に座った






樹｢…昔の、話なんですけど｣






そう切り出して
ゆっくり、ゆっくり、自分の話をしてくれた

途中、聞いてるのが苦しくなるくらい
樹くんの過去は思ってたより重くて、暗くて
信じ難い話だった

樹くんは、人の温かさを知らずに生きてきたんだ
ひとりで背負い込んで、解決しようとして
結果…間違った方向に進んでしまった

樹くんを救ってくれる人は…いなかったのかな


全部話し終わったあと
しばらく会話がなかった

樹くんは不安だったんだと思う
この話をわたしにして
どう受け取られるのか、怖かったんだと思う

わたしは…なんて言葉をかけたらいいかもわからずに
前にいる樹くんを
そっと抱きしめた




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