アソビゴコロ 〜Wedding？〜３【川村壱馬】

大切 ページ19

壱馬side.




なるべく音を立てないで襖を開けた
もう布団が敷かれてて
仲居さんが来たことが分かる

Aは窓の傍に立って景色を見てた

布団に目を移したら
2つの布団の間に隙間ができてた

…昨日はくっついてたのに
離したのか、お前が

胸が痛む感覚
慣れなくていまだに嫌な気分になる






壱｢…A｣


『っ、！』






思ってた以上にびくついて
振り返ることはなかった

…？
変だな






壱｢A？｣


『おっ…、おかえりなさい！今日疲れましたね、もう寝ますか？』


壱｢え、あぁ…でも、これ｣


『わたし…っ、１回外の風浴びてきます！！』


壱｢は？｣






おかしい
そう思って腕掴もうとしたけど
するりと抜けて部屋を出た

…追いかけた方が、いい、よな？






壱｢外の風浴びるって日本語どうなんだよ…｣






携帯と財布だけ持って、外に出た
熱帯夜っていう言葉がよく似合う、暑い夜

どこ行ったんだ、あいつ

単純だから砂浜の方か
バイトしてる海の家の横を通って海に近づいたら
案の定小せぇ背中があった

呼びかけようとして、止まる
電話してる？






『関係ないって！好きなことしてるんだからわたしも好きなことしたっていいじゃん』

『今更やめてよ…。絶対に会わせないから』

『知らない。もういい、切るから』






…誰と電話してたんだ？
全然分かんねぇけど、泣いてる気がした

強がった口調の割に声が弱くて
今も携帯を握り締めて俯いてる

気づいたらAに近づいて
後ろから抱きしめてた






『えっ…、壱馬先輩…？』


壱｢…泣いてんじゃん。なんで？｣


『泣いて…ないです。海の水が目に染みただけ、』


壱｢んなわけあるか。電話、誰｣


『………誰でもないです』


壱｢ふーん……、隠し事ね｣


『あっ、そういうわけじゃ…っ、！』






俺の顔を見ようと振り返ろうとするから
すかさず唇を奪った

涙でしょっぱい
これで泣いてねぇとか通用するわけねぇだろ






壱｢…こっち来てから、イライラしてお前に当たってた。……ごめん｣


『え…』


壱｢いつにも増して余裕ねぇっつーか…、まぁ、理由は察しろ｣


『察する…難易度高い…』


壱｢でも、さ…その……お前が大切、なのには変わりねぇ、から｣


『っ…！』


壱｢何かあったら、言えよ｣






…あぁ、くそ
今すぐ帰りたいくらい恥ずかしい

でもここで帰ったら
今までの俺と何ら変わらないから
伝わるまで、そばにいる




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