角砂糖に溶ける夢【北×樹】

家具 ページ18

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『樹…くん、？』






状況が理解できずに名前を呼ぶも
反応はない

顔が見えないから、何を考えているのかもわからない






樹｢Aさんに…お願いがあります｣






胸の前で握りしめていた携帯を樹くんにスッ…と取られ
耳元で囁かれる

さっきの男性社員にやられたのとは大違い
ドキドキして、心臓の音が樹くんに聞こえそう






樹｢…俺といる時は、あいつの話しないで｣


『あい、つ…？』


樹｢吉野…北人｣






なんで、どうして

なんて聞けるわけなかった
樹くんの声が何だか苦しそうだったから






樹｢約束…してくれる？｣






考えてみれば近すぎる距離に
頭がパンクしそうになって
ぶんぶんと首を縦に振る

すると、耳元で樹くんが笑ったのがわかった






樹｢…ありがとう。怖がらせてごめん｣






少しだけ眉を下げながら
申し訳なさそうに謝ってきた

樹くんが離れて、ホッとする

近すぎた、
心臓に悪いよ…

部屋にあがらせてもらったけど
ほっくんへの連絡をどうしようかずっと迷ってた
携帯はさっき樹くんが取って
今はテーブルの上に置いてくれてるけど
樹くんには助けてもらったから
約束破っちゃいけない気がする

ほっくんが帰ってきたら言えば大丈夫だよね
家もすぐそこだし、樹くんとバイバイしたらちゃんと言おう


樹くんの部屋は殺風景で
テーブル、ラグ、テレビしかリビングになかった
キッチンの方から軽いおつまみと梅酒を持ってきてくれた






樹｢飲める？｣


『うん、好き』


樹｢Aさん、なんかで割らないと飲めなそう｣


『…ソーダ割りがいい』


樹｢あ、ちょうどあるや笑｣






ソーダと自分が飲むビールを持ってきて
わたしの向かいに座る

ビールの種類を見て
ほっくんが好きなのと同じだ、と思わず口に出しそうになる

慌てて開けた口を閉じた
ほっくんのこと話さないのって
ずっと一緒のわたしにとってはすごく難しいことだな


かんぱ〜い、とグラスを合わせて一口飲んだ
…あ、仕事なのに飲んじゃった
ちょっとにしとかなきゃ眠くなっちゃう






『ねぇ、なんでこんなに家具ないの？』


樹｢あぁ、全部新調しようと思って実家からは持ってこなかったんです。でも、買いに行く暇なくて…笑｣


『広いのにもったいない。あ、今度のお出かけ家具見に行こうよ！』


樹｢え、いいんですか？｣


『うん！来週の土曜とか…お休み？』


樹｢はい、休みです｣






広い部屋なのにこれじゃ寂しいもんね




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