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「Aさん！Aさん！」
嬉しそうな顔をして近づいてくる麻美ちゃんが子犬のようで可愛かった
合コンでいい人に逢えたのか、今日の占いが1位だったのか、、可愛すぎて尻尾が見える気がする
「あの〜」
急に小声になった
「私、大倉さんとお付き合いすることになりました〜！！！」
なんだか全てがスローモーションのように..
今の麻美ちゃんの話も脳内でゆっくり再生されている
状況が把握できない
「まだ(仮)なんですけどね！大倉さんと正式にお付き合いできるように女磨き頑張ります！」
「おめ、、でとう..頑張ってね！」
振り絞って出た言葉がこれ。
心の底から喜べないこの気持ちはなんなんだろう
わかってるはずなのに認めたくない意地っ張りな私
はやく大倉忠義が好きって認めろ私！
そう言い聞かせてもなかなか自分に正直になれない
今更好きって伝えても麻美ちゃんが可哀想だし大倉さんもいい迷惑だよね。そう！そういうこと。
今目の前にある仕事をして忘れよう
「Aさん...？」
「なんで泣いてるんですか..」
麻美ちゃんに言われて気づいたけど私泣いてる
後輩の前で泣くなんてみっともない
「あ、なんだろ..麻美ちゃんの嬉しい話が聞けて感動しちゃった！私も嬉しくなっちゃって..」
これで誤魔化せただろうか
「Aさん..ありがとうございます(泣)」
「麻美ちゃんまで泣かないの！ほら！あと30分でクライアントとの打ち合わせでしょ？ほら、メイク直して早く準備する！」
告白してもないのに振られた気分だ、、
私の人生っていつもこんな感じなんだな、、
「大倉さん..」
私は最低な人間だ
後輩の彼氏の名前を呟くなんて、、
いつも同じ飲み屋だし違うところに行ってみよう
そう思って会社の近くの飲み屋さんに入ってみた
一番端っこのカウンターに座ってお酒のメニューを眺めていた
「へぇ〜ひとりで飲むんや〜」
神様って意地悪だよね
ある人を忘れたくて1人で飲みに来たのに
ある人に遭遇するなんて..
偶然か必然か..
「え、あ、おお..くらさん」
「隣、座ってええ？」
隣の席に置いていたバッグを急いで退かして
椅子を引いた
「ど、どうぞ」
「ぎこちないやん、、笑」
「そ、そんなこと..」
平常心を保つのに必死でうまく喋れない
「麻美ちゃんと付き合うことになった」
本人から一番聞きたくなかった言葉
「そうですか...」
肯定するしかなかった
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作者名：まるやん | 作成日時：2019年10月14日 6時
