Case.120 -The Darkest Nightmare- ページ1
観覧車を降り、避難誘導に従って人混みに紛れる。
Aは無事だろうか…。
彼女のことだから、あれくらいの崩落は上手く回避したはずだが、心配なものは心配だ。
観覧車を降りながら周辺を探したが、彼女の姿は見えなかった。赤井と同じように、転がった車輪の方にいたのだろう。
転がっている最中に起きた爆発は、十中八九Aの仕業に違いない。
ふと、目の端に何かがチラついた。
「！」
見ると、植え込みを隔てた林の中に赤井が佇んでいる。
僕の様子を確認に来たのか。
相変わらず律儀な奴だ。そこがまた気に入らない。
だが、今回ばかりは助けられた。コイツがいなければ、被害はこれだけじゃすまなかっただろう。
あの場にいたのが、この男で良かった。
…不本意だが。
くいっと顎をしゃくって、さっさと消えろと訴える。これ以上顔は見たくない。
赤井は素直に身を翻し、林の奥へ踏み出す。
「――秀一」
「っ！」
ハッと目を瞠る。
植え込みの向こう側を、人の流れに逆らうように歩いてきたのは。
―――A。
「ジェイムズから連絡が入ったわ。キールはもう倉庫街にはいなかったみたい。今こっちに向かってるから、アンタはそのライフルが人目につかないように待機」
「…分かった。お前はどうする」
その問いに、Aは薄いグレーをちらりと僕に向けた。
「…上手く言っておいて」
「了解」
端的な返事を残して、赤井はその場を立ち去る。それを見送ってから、Aはひょいと植え込みを飛び越えてきた。
「…こっち」
「え…？」
Aに手首を掴まれ、引かれるがままに人混みを避けて歩く。
どういうつもりなんだ…？
前を行く彼女の顔が見えなくて、Aがどういう心境でいるのか分からない。
対して僕は、掴まれた手首に意識が持っていかれる始末だ。
だって仕方ないだろう。
――会いたかったから
「っ」
そう言って、髪を搔き上げた指の感触を思い出す。
あれはずるい。反則だ。
唇に嚙みつかなかった僕の理性を褒めてやりたい。
悶々としている間に、どうやら駐車場の近くまで来ていたらしい。
人混みが散り散りになっていくのを見ながら、公安の部下を交通整理に回すべきだろうかとぼんやり考える。
Case.121 -The Darkest Nightmare-→
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胡蝶(プロフ) - 藍色さん» コメントありがとうございます！もったいないお言葉です…が、とてもとても嬉しいです！語彙力捻り出しながら書いた甲斐がありました…。書くのが遅い上に煮詰まっていて遅筆に拍車がかかっておりますが、どうかお付き合いくださいませ。 (2022年8月17日 13時) (
レス) @page14 id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - 作者様のキャラの感情表現、文才能力が凄すぎます…！度々一人で悶えながら読んでます！面白い作品に出会えて私は幸せです(´；ω；｀)更新楽しみに待ってます！ (2022年8月16日 3時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - ねるさん» コメントありがとうございます！一気読み嬉しいです！書くのが遅くてお待たせしておりますが、頑張って更新いたします…！ (2022年8月9日 15時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
ねる - 一気読みしてしまいました！続き待ってます！更新頑張ってください(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎) (2022年8月8日 9時) (レス) @page27 id: a5b6221b88 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて嬉しいです！特に二幕はデレ期のつもりなので…距離感を詰めていく様子にお付き合い下さいませ！ (2022年7月14日 20時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：胡蝶 | 作成日時：2022年6月25日 12時
