Case.53 ページ15
丸みを帯びた四角いクッションに腰を下ろすと、良い具合に体が沈み込んだ。
「どうだ、結構いいだろう?」
「う…確かにこれもアリ…」
体にフィットすると銘打ったそのクッションは、日本で人をダメにすると名高いそれだった。
──君が絶大な信頼を置いているアメリカのクッションが素晴らしいのは知っているが、せっかくだから日本製品にも興味を持ってくれると嬉しいな
そう言われて連れてこられたのは、シンプルで質の良さがウリの店。
「ああー…これは、ダメなやつ…」
「ははっ、そうだろう?君なら気に入ると思ったんだ」
どうしよう、本当に動きたくない。人をダメにするとはよく言ったものだ。
「んー…でも、あっちのメーカーの抱き枕も欲しいのよね…」
本部勤務の時は、仮眠室に私専用の抱き枕を置いていたくらいにはお世話になっていた。最近は早くもあの抱き心地が恋しくてたまらない。
どっちも捨てがたい…。
真剣に悩んでいるのに、クッションがその思考さえ奪っていく。いっそこのまま寝てしまいたい。
「あ、こら。寝るなよ?」
徐々に体を丸め始めたのを目ざとく見つけて釘を刺される。残念。
零に差し出された手を取ると、強制的に立たされる。やっと奪われていた思考力が戻ってきた。
「これはなかなかに危険な代物だわ…」
座ったが最後、もう何もできなくなる。潜入中にひとつ置いておくべきだったかもしれない。
悩ましい…。
うんうんと唸っていると、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
「あーっ!安室の兄ちゃんと、彼女の姉ちゃんだ!」
「ホントだー!」
「偶然ですねぇ!」
バタバタと駆け寄ってきたのは、ポアロで知り合った、ボウヤのスクールの友人達。
声をかけてくれたのはいいけど、ひとつ訂正させてほしい。
「彼女じゃないわ」
ぴしゃりと言い放つと、体の大きなその子はきょとんと首を傾げて、そうだっけと呟いていた。
「時間の問題ですし、わざわざ訂正しなくてもいいじゃないですか」
「透は黙って」
即座に“安室透”へとスイッチを切り替えた零は、いつもの安室スマイルを浮かべて堂々と宣ってくる。子供の前で何言ってんのよ。
「それで、君達はここで何してるの?保護者は?」
「今日は、博士と一緒に仮面ヤイバーのヒーローショーを見に来たんです!」
「でも、待ってる間に博士がお腹壊してトイレにこもっちゃって…」
「今、コナンと灰原が様子を見に行ってんだ!」
子供達が口々に教えてくれる。
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胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます。修正いたしました! (2022年8月2日 2時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年8月1日 7時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます!修正いたしました。ご不便をおかけいたしました…! (2022年7月31日 17時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 66話、名前変換出来ていない箇所があります。 (2022年7月31日 11時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶(プロフ) - cherry*さん» こちらこそです!更新本当に遅いのですが、どうか最後までお付き合いください! (2022年5月27日 12時) (レス) id: 99e92a821f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月19日 5時