Case.7 ページ9
あれは4年前。まだスコッチが───ヒロが、生きていた頃。
「まったく本心を見せてくれないと思ったら、弱って頼ってくることもあって。彼女の行動に、いちいち心の中で一喜一憂したものです」
「へぇー、安室さんでもそんな片想いするんですね!」
意外だなぁ、なんて梓さんが1人でテンションを上げている。
…意外、か。
僕は信じられなかった。だってそうだろう。
まさか、潜入した組織の幹部を好きになるなんて。
どうかしているとしか思えなかったが、それでも彼女に惹かれた。
彼女が自分と同じNOCであれば良かったのにと、意味のない事を考え始めたのはいつからだっただろう。
せめてその腕に手錠をかけるのは自分でありたいと願い始めたのは、何がきっかけだったか。
伝えることのできない想いを抱えながら彼女のそばにいたあの頃は、一喜一憂などという言葉では表せない。
「でも、安室さんなら付き合うまで秒読みじゃないですか?なんだか女性慣れしてそうですし、何よりイケメン!」
「あはは…そう簡単にはいきませんよ」
女性慣れしてそう、というのはハニトラの経験から間違いではないが、それが彼女に通じるとは思えない。
「ダメですよ、そんな弱腰じゃあ!ちゃんとアピールしていかないと…!」
眦をキッと吊り上げて凄まれる。どうやら彼女の恋バナスイッチを押してしまったらしい。これは長くなるぞと感じ、すぐさま終止符を打った。
「アピールしたいのは山々ですが、…いなくなってしまったんです、彼女」
「…え、」
「だから、まずは見つけるのが先ですかね」
梓さんは言葉を失って黙り込む。優しい彼女相手に酷いやり方だとは思うが、これも事実であることに変わりはない。
「あの、…すみません。私、軽率に…」
「大丈夫です。きっと見つけてみせますから。それに、猫みたいに気まぐれな彼女なら、突然ひょっこり顔を出してくるかも──」
その時、カランと店のドアベルが鳴った。
「Aさん、ここだよ!」
「ここのハムサンド、すっごく美味しいんです!」
「私のおごりだから、遠慮しないで!」
わいわいと入ってきたのは、見慣れた少年と女子高生の3人。
──そして。
「じゃあ、期待しちゃおうかな」
彼女に───ギムレットによく似た、女性がいた。
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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時