Case.33 ページ41
「…何かしたら引っぱたく」
「肝に銘じる」
掴んでいた手を放されて、気を落ち着かせようとカップに口をつける。バーボンの方もどこか落ち着かないのか、少し目線を彷徨わせた。
「茶を出しておいてなんだが…何か食べるか?僕はバイトが終わってそのままだから、夕食がまだなんだ」
「…作るの?」
ポアロでそれなりにと答えていたし、自炊してるのかと思って聞いたら、やっぱりそうだったらしい。ああ、と短い返事が返ってきた。
どうしようかな。
私も夕食はとってないけど、時間も遅い。今日は仕事道具のパソコンやらなんやらが大量に届いて、客間の一部を大改造させてもらってたから食べそびれたんだよね。
ちなみに大改造の許可はちゃんともらってるので安心してほしい。
すると、思案している私を見て困らせたと勘違いしたのか、バーボンは気まずそうな顔で項を触った。
「その、もう済ませたならそれでいいんだ。ただ、ポアロでハムサンドを気に入ってくれたようだったし、…せっかくならと、思って…」
尻すぼみに声が縮んでいき、それに比例して目も伏せていく。
え、まさか。
「緊張してる…?」
「…当たり前だ」
不貞腐れた声で返されて、あまりのらしくなさに笑いがこみ上げた。
「ふっ…ふふ…っ、あのバーボンが、緊張…?」
「…笑うなよ」
「ふふ…これが笑わずにいられる?」
探り屋の異名は伊達じゃない。どんな場所であろうと、隠密に、あるいは大胆に、正確な情報を盗み出す。まるで、完璧にこなすことが当然だとでもいうように。
それが、こんなことで緊張なんて。
可愛いとこあるじゃない。
私がなかなか笑うのをやめないからか、バーボンはどんどん不機嫌になっていく。
これはもうとっくに、私の知る彼じゃないな。
「おい、いつまで笑う気──」
「零」
792人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時