Case.18 ページ20
不機嫌な面持ちのまま、両目のカラコンを外してゴミ箱に捨てる。すると、横から伸びてきた手に顎をとらえられた。じっとこっちを見下ろしてくる蒼い瞳と目が合う。
「…何」
「何も。ただ、やっと貴方の素顔を見れたなと思いまして」
胡散臭いことを。
バーボンの手を叩き落として、閉め切られていたカーテンを開ける。外はまだ昼の明るさを保っていた。どれくらい寝てたのかと思ったけど、1時間も寝てないらしい。
「それで、私をどうするつもり?ジンに引き渡すわけでもないんでしょ」
「ええ。そんなことをすれば、逆に僕が殺されてしまいますから…」
ポケットに両手を突っ込んで肩を竦めるのは、余裕がある時に見せるバーボンの癖。
まぁ、どうするつもりとは聞いたけど、何を考えてるかぐらい予想はつく。この4年間、どこに身を隠していて、どう逃げ切ったかを知りたいんだろう。そして、組織について知っている情報を洗いざらい吐かせようって魂胆に違いない。
なら、先手を打つまで。
「…ねぇ。ここまで来たんだし、もう演技はいらないと思うんだけど」
すると、僅かにバーボンが眉を動かした。
「…演技?なんのことだか、さっぱり分かりませんね」
顎を指でつまむようにしながら、挑発的な笑みを浮かべる。
一瞬で動揺を消した…か。
さすが、あの組織で指折りの探り屋にのし上がっただけある。──でも。
「とぼけても無駄。私の得意分野がなんだったか忘れたの、バーボン。…ああ、なんなら本当の名前で呼んであげようか?」
私は不敵に笑みを浮かべて、その名を口にした。
「公安警察───降谷零」
「っ!?」
瞬間、バーボンの余裕が崩れた。
──今だ。
一息で身を低くして足払いをかける。体勢を崩した一瞬でスマホを取り返し、部屋を出て玄関へと走った。ありがたいことに靴は隠されていなかったけど、暢気に履いてる場合でもない。スマホをポケットにねじ込み、靴を持って裸足のまま外へ飛び出した。
「チッ…高いな…」
でも、ギリギリ階段は省ける。
「待て、ギムレット!」
バーボンの叫ぶ声が聞こえるけど、待てと言われて待つ奴がどこにいる。
ちらっと目を走らせて逃走経路を把握すると、勢いに任せて柵を飛び越えた。
「な……!」
「……っ」
近くの街灯に飛びつき、一気に下まで滑り降りる。
見たか、キュラソー直伝。
あの身のこなしは役に立つと思って、少しコツを教わったことがあった。まさかここで使うことになるとは思わなかったけど。
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胡蝶(プロフ) - カイさん» コメントありがとうございます!キャラクターの“らしさ”の部分は結構気にして書いているので、気づいて頂いてとても嬉しいです!更新頑張ります! (2022年5月19日 23時) (レス) id: 1da46a4e4a (このIDを非表示/違反報告)
カイ - えええ…素敵すぎて今日初めて拝見したんですけど、全て見終わっちゃいました…。キャラクターの性格をよく噛み砕いて書いてる印象を受けました。コナンファンには絶対読んでもらいたいー! (2022年5月19日 0時) (レス) @page35 id: 6aad3c552e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡蝶 | 作成日時:2022年5月18日 2時