1.あかんすっきやねん【ＪＷ】 (ページ27)

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溺れるナイフページ27

-次の日-

新しくできたと言って監督から渡された台本には、

"え、ほんまに言ってますか？大友とキスシーン？？"

"そー、やってみて？うまくいけば一回だけやから。"
監督はいつもより上機嫌に話した。

"...。"
私の隣で一緒に台本をチェックしていた重岡はフリーズしていた。

"あー...。これは笑ってしまうな...。"
私は、重岡の真剣な顔を想像して笑ってしまう。

"えー普通、緊張するなぁとかちゃうん？笑ってまうはちゃうやん！！"
重岡は私の頭をはたいた。

"はい２人とも、台本頭に入れて。すぐ本番するよ！"
という監督の声に、

""はい、わかりましたー。""
と素直に返事をした二人だったが...。

重"眉毛眉毛って..."

姫"....。"

姫"...ふふっ。"

重"ちょ、笑うなて！！！"

もう何度目だろうか、重岡とのキスシーンがうまく撮れず

何回も何回も撮影している。

"あかん、もーええよぉ一生分したわー。"

重"俺かて、もーええよ。"

...まじで心臓がもたへんわ。

Aの顔が近づいてくるたび、唇が触れるたび、俺の心臓は毎回バクバクしている。

監督"Aちゃん、やっぱ大友君ともキスシーンはあかんねんな。菅田くんともうまくいけへんかったしな。"

"すんません。"
そう言って顔を赤くするA。

"え、菅田とも何回もしてるん？？Aわざとなんちゃう？？キス何回もしたいからって。"
重岡はキャーと口元に手を当てて私を見た。

"わざとちゃう！！！"
そう答えるが私は顔がどんどん赤くなっていった。

結局さらにもう3テイクしたあたりで、監督がOKを出した。

"あーーー、むっちゃ疲れた。"
そう言って私はぐったり椅子に座った。

"俺もー。いろんな意味で疲れたわぁ。"
そう言って、重岡が隣に座った。

"しげとのシーンは、今まで順調にいってたんやけど...なれへんことするとあかんなー。"
隣に座る重岡のぐったりした横顔が見えた。

"過酷やなー。映画撮影ってもんはー。"

そう言って天井を見上げて、ぽつりぽつりと重岡が話し始めた。