17話 足 ページ18
「いや、いいよ。……間違ってないし」
私が謝ると、彼は数秒考え込んでからそう答えた。
「…ちょっとこっち来て」
『うえっ、』
手を引かれ近くのモニタールームに入る。部屋には誰もおらず薄暗い。そして彼は椅子に座り、ズボンの裾をあげた。
『…それ、』
「右膝前十字靱帯断裂。…一年前に膝を怪我したんだ」
膝には縫合の痕。痛々しいその傷に私は目を細めた。
『…完治は?』
「一応リハビリとかして完治はしてる。…でも医者からはもう一度同じ箇所をやったら選手生命は危ういって言われた」
重心が傾いてるのはこれが原因か。…というか何で私にこの事を話したんだ?私が指摘したのもあるとは思うが、こうして面と向かって喋るのは初めてなのに。
『あの、何で私に話したんですか?』
「…何となく?」
『…』
ぽかん。…え、何となく?
「スポーツドクターって聞いて選手でもないから話してもいいかなって」
『見習いだけど…潔くん達に話してないの?』
「うーん…今はあんまり話したくない」
椅子の上で体育座りをして、足先を擦り合わせる。
…名前、何て言うんだろ。
可愛くて強気なピンク色の彼。沈黙が辛かったのか口を開いた。
『名前、聞いていい?』
「…千切。千切豹馬」
『豹馬?かっこいい名前だね。…サポーターはつけなくて大丈夫そう?』
「ん、」
『…私は君の担当医じゃないし、ましてや医者でもない。だからあれしろこれしろとは安易に言えないけど、サポートはできるから。困ったらなんでも言って』
伏し目でこちらを見て、すぐに反らす。そして小さい声で「何かあったらな」っと呟いた。…少しは心開いてくれたのかな。話に区切りを付けるため私は立ち上がり、ウォーターサーバーからコップに水を注いだ。
『ねぇ、もしかして足とか速かったりする?』
「え、何で」
『膝前十時靱帯断裂はサッカーの場合急な動きや方向転換をしたりして負傷したりすることが多いから。
…後名前に豹が入ってるから?』
「は?…ハハッ、何だそれ」
吹き出して小さく笑う千切くん。私は彼にコップを渡した。
『何かあったら相談して下さい。頼りないとは思いますけど』
「(あ、ピアス)」
『…?聞いてます?』
「…かっけーな、ピアス」
『え、本当?ピアスに気づいたの千切くんで3人目だね』
私が笑うと再び彼も小さく口角をあげた。
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苺子(プロフ) - ぺんぺんさん» コメントありがとうございます!読んで頂き嬉しい限りです(*´꒳`*)これからもよろしくお願いします! (2023年3月18日 23時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
ぺんぺん(プロフ) - 最初からとっても面白いので、ついつい熱中して呼んでしまっています・・・。これからも頑張ってください!! (2023年3月17日 20時) (レス) @page28 id: 0923c869aa (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - ユイさん» コメントありがとうございます!今あなた様に出会えたことに感謝です((更新頑張ります!(*'▽'*) (2023年3月15日 22時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - 初コメ失礼します!もっと早く見つければ良かったです。好きです!応援してます (2023年3月14日 13時) (レス) id: 0e75ff5f17 (このIDを非表示/違反報告)
苺子(プロフ) - アレンさん» コメントありがとうございます!雪宮くんに振り回される夢主です((これからもよろしくお願いします…! (2023年2月4日 11時) (レス) id: b537714951 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:苺子 | 作成日時:2022年11月29日 16時