【本編小説】この夏は君と。 (ページ25)

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◆1歩目を踏み出して［冬涙雪］ページ25

母に強引に押し切られて早1週間。必要なものの買い物や、父へのこの旅行への相談やらで、あっという間に当日になってしまう。カレンダーには今日、7月1日の日に赤色のペンで丸がついている。今日は、遂にやってきたこの招待された旅行の出発の日。

空は青々と澄んでいて、長期旅行に出発するには、とても清々しい気持ちになるような青空だった。

集合は午前10時。とある海辺に集まるらしい。そこから船の中で数時間を過ごし、小さな島でこれから過ごす。

その集合場所の海は私の家からは少し離れているため、早めに起きて、早めに行かなければいけない。

低血圧気味で早起きが苦手な私は、まだ重たい瞼を無理矢理開けて、指先で擦りながら必死に目を覚まそうと努める。

「雪、そろそろ出る時間だぞー？」

父が1階から大きな声で私を呼ぶ。父は、この招待状の件に関して、母から話を聞き、私のように母に押し切られていた。父は母と違って落ち着いているので、母から聞いた後にしっかりと私にも確認をとってくれた。
しかし、そんな優しい父を心配させるのも、何だか小さく罪悪感を感じたため、"心配しないで、私は大丈夫。行ってくるよ。"と本心とは裏腹なことを口走った。

「はーい、今行くー。」

短く返事をし、着替えの服や、日用品が入った大きめのカバンと、ややサイズの大きいリュックを背負う。
パタパタと階段を駆け下りて、急いで車に乗った。

私は車で揺られながら、静かに窓の外を見ていた。

正直、とても緊張している。

知らない人ばかりのところで私はちゃんとやれるのかな。
ぼんやりとそんなことを不安に思う。
あと少ししかこっちに居られないと思うと、興味や探求心よりも、不安や恐怖が勝ってしまう。

深く息を吸って、大きく息を吐く。深呼吸深呼吸。

「大丈夫、大丈夫。」

きっと私は上手くやれる、そう自分に言い聞かせた。

「雪！みてみて！！窓の外！」

母がはしゃぐのを見て、雪は窓の外を見た。
窓の外には、青い蒼い碧い大きな海が広がっている。
太陽の光がキラキラと反射していて、とても美しい。

「…綺麗…。」

この海に見とれないような人は世界にいるのだろうか、そんなことを考えてしまう程美しい海だった。
キラキラして見える海に見とれていると、父は、

「もうすぐ着くよ。」

と、雪に向かって声をかけた。

ドキドキと鼓動が早くなる。
なぜだかそわそわとしてしまう。

「あぁ、どきどきするなぁ……。」