【本編小説】この夏は君と。 (ページ11)

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太陽の光が当たりきらめく海を背景にした写真に、写真からでもわかる手入れの行き届いた設備や施設には、不思議と目を惹かれた。何枚か入っていた写真に目を通すと、おれは折りたたまれた白い紙を手に取る。開けてみると、紙には澄んだ青色の文字がびっしりと埋まっていた。全て読むことがめんどくさかったおれは、飛び飛びで文章を読むことに。
　……読み終えたおれは、紙をテーブルに置き一息つく。既にカレーをよそった皿が目の前にあった。

「なんて書いてたの？」

　手紙を読み終えたおれを見た姉さんはそう尋ねてきた。

「今年の夏はここで過ごしてみませんか？的なこと」
「なにそれ？」

　けたけたと、やや馬鹿にしたように笑いながら手を出してくる姉さん。手紙をよこせ、ということをなんとなく理解したおれは、写真と共に手紙を渡す。暇になったおれはようやく、冷め始めた料理を口に運び始めた。

「えー、なにこれすっごーい！あたしが行きたいくらい！」

　手紙を読んだ姉さんがはしゃぎながら言う。たしかに姉さんのようなアウトドア派の人間は行きたいと思う場所だ。しかし、残念ながらおれは全くもって外で遊ぶことには興味が無いため行きたいとは思えない。

「で？これ、行くの？行かないの？」
「考え――」
「せっかくだから行きなさいよ！」

　おれが答える前に、姉さんの言葉に遮られた。「引きこもりだし」と余計な一言も付け加えられたが、今年の夏も家から出る予定は今のところないという引きこもりぶりなので、反論はできない。

「2人してなにで盛り上がってるの？」

　自分の食事を支度をし終えた母さんが、会話に交じってくる。姉がニコニコとしながら母さんに手紙のことを説明し始めた。……もちろん、行くことを前提に。
　けれど、手紙に送られてきた場所に行くのも悪くはない。不思議とそう思っている自分がいた。