【短編集】天空の鳥

【ウィザード】Lost in the … ページ5

* A:晴人の彼女。幼馴染み。

･

ファントムが出現して、晴人は変身する。
なんて日なんだろう。折角のデートだったのに。
だけど、そこに絶望する人がいるなら、希望になろうとするのが晴人だった。昔からそう。
だから私も。

｢大丈夫です。絶対、絶対に晴人が助けますから｣
｢もう少しだけ、あと少しだから｣

ゲートだと思われる人に、声をかけ続ける。
それでもその人の絶望からの侵食は止まらない。
今回のファントムはどうやら強敵で、晴人も手こずっているようで。

｢晴人！！！｣

晴人を見ると、弱っているところに大きな衝撃波のようなものを敵が打ち込もうとしている所だった。

私は無我夢中で駆け出した。
私は晴人までも失いたくない。両親を失った晴人が、夢を失っても希望を捨てなかった晴人を。

｢…う…ぁ……っっっ！！！｣
｢A！！！｣

そこからの私の記憶は消えた。
……晴人を守れた、なら。それで良かったんだ。

＿＿＿＿

ここは夢なのだろうか。
朧げな姿が見える。たぶん、あれは晴人だ。
晴人、ねぇ、私どうしちゃったんだろう。
そうやって話しかけるのに、彼の背中は遠のいていく。

｢ねぇ、晴人｣
｢お願いだから｣
｢いかないで｣

＿＿＿＿


その後聞いた話によると私は三日三晩生死を彷徨っていたらしい。
目が覚めた。手に温もりを感じる。……晴人だった。

｢A、お前……｣
｢ありがとう、晴人｣
｢喋るな、今は安静にしてなきゃな｣

改まった声で晴人は私の目を射抜く。
｢話があるんだ｣
｢今回、お前を失いかけて、思ったんだ｣
｢もっと近くでお前を守らなきゃいけない、って｣
｢だから｣

結婚してくれ。

その言葉を聞いた時、私は思わず泣いていた。
｢返事は今はしなくていい、回復したら……｣
｢晴人……結婚しよう、私も、晴人と同じだから｣
｢はぁ……やっぱり言うことを聞かない悪い子だな、Aは｣

晴人はそう言って、私の頭を撫でた。
小さい頃はそう変わらなかった体格も、今では変わりきってしまった。それでも、私たちの関係はこれからもずっと変わらないまま、なんだろう。

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