chocolateのゆくえ《ars》 (ページ11)

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コーヒー牛乳片手にいくら智くんに話を聞いてもらったって、出る結論は最初から一つだけ。

それがわかっているからいつも、智くんはメンドクセーと文句を吐く。

それでも付き合ってくれる智くんに義理チョコの一つくらい渡したい私の気持ちを翔ちゃんはちゃんとわかってくれているのだと、私も分かっている。

多分智くんも、ほんとは知っているんだろう。

だからこそ言う。

痴話喧嘩の詰まったチョコなんてもらいたくないと。

もらわないでくれてよかったなんて、自分勝手極まりないけれど。

押し返してくれた智くんに今更感謝した。

「そうだ、チョコのお礼じゃないけど、俺も謝んねぇとと思ってて、ハンカチのこと」

「翔ちゃん…」

「悪かったよ。センセーに貸した後どっかいってて、今日聞いてみたら教卓の中に置き忘れたって言うから…」

だから取りに来たんだ。

ちゃんとハンカチを探してくれていたことがわかってホッとする。

それと同時に、あぁそうだよね、やっぱり翔ちゃんが私のあげたハンカチをそう簡単に失くすわけなかったんだ、と思い直した。

あの先生がつけた甘ったるい匂いのする香水が翔ちゃんは嫌いじゃないだろうから、そんな翔ちゃんではきっと思いつきもしないだろう。

たぶんあの人は、優しい翔ちゃんが貸してくれたハンカチを盗んだのだ。

いや、盗むつもりがあったかどうかはともかく、少しだけ手元に置いておきたかったのは間違いない。

これは女の勘、ではなく、時折どうしようもないことを考える複雑な女の子の恋心だろうと想像できるからだ。

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