運命なんて信じない８ (ページ8)

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撮影現場に着いた。
以前と同じ颯太さんのスタジオ。
懐かしい。何年ぶりだろ？

「15年ぶりよ。」

『えっ、舞香聞こえたの？』

「んーん。何年ぶりって顔してたから。」

『さすが、よく俺のこと見てるね。』

「っ、違うもん…」

照れてて可愛い。
ん？今日、可愛いって言ってんの何回目だ(笑)

15年前
ここのスタジオで俺は舞香とは知らず
“ray”として演技をしてた舞香と撮影をした。
しかも、それはたまたま代役で。

演じているうちに舞香の演技に惹き込まれ
その時の俺の舞香への気持ちがそのまま出てしまい、
“ray”である舞香を抱きしめていた。

抱きしめた瞬間
俺が探していた夢の人だって分かった。
抱きしめた感覚が舞香だった。
そして気が付くと舞香にキスしてたんだ。
これが俺の正真正銘のファーストキス。

その後すぐに舞香が倒れ
“ray”が舞香だと分かった。

その時はまだ俺が気持ちを伝えただけだったから
まだ俺たちの間には何もなくて
そのキスシーンには触れることを避けてた。

それから俺の想いを受け止めてくれた舞香と
ずっと隣で歩いていくことになった。

15年間、平坦な道ではなかった。
舞香が突然俺の前から姿を消したこと。
２年半の間、訳も分からずに離れ離れになった。
毎日、夢中で舞香を探したんだ。

そして、やっと見つけた舞香は病魔に襲われていた。
やっと見つけた舞香を二度と離さないって決めて
すっと隣にいて欲しいって言ったのもこの頃。

そして俺たちは結婚した。

それからも舞香が事件に遭い
生死の世界を彷徨ったこと。
家族を公表したこと。

俺が記憶障害に罹ったこと。

３度目の初恋を経て、３度目のプロポーズをしたこと。

この15年間、色んなことがあったな。
辛いこともあった。
でも必ず二人で乗り越えてきた。
もちろん辛いことの何倍も幸せだけどね。

何かここに来て
舞香への想いが改めて大きくなった気がする。

舞香へ伝えよう。
今回の撮影は、嘘偽りのない
そのままの俺の気持ちを表したいってことを。
だから舞香も同じ気持ちでいて欲しいって。

俺は今のこの気持ちを舞香へ伝えた。